ケボとモッチの恐ろしさ。

マヤ「このキャラクタに、言いたいことがあるんだけど

ユウ「………は?」

 


 マヤ「ねぇ、これ見て」

ユウ「は?」

マヤ先生はそう言いながら、医局のデッキに、DVDを入れました。

先生は、よく小児科の診察室から、DVDをくすね もらってきます。

それは、NHK教育の英語番組、「えいごであそぼ」でした。

ユウ「これが、どうしたんですか?」

マヤ「いいから見て

(C)NHK

マヤ「このキャラクタの名前、知ってる?

ユウ「………何でしたっけ…?」

マヤ「左がモッチで」

ユウ「…はい…」

マヤ「右が、ケボよ」

ユウ「………」

マヤ「………」

ユウ「………」

 

マヤ「え、ゲボ

 

やめてください。

 

 

マヤ「だってどう考えても、vomitingでしょ!?」

 

医学用語で表現しても、「嘔吐」は「嘔吐」です。

 

マヤ「絶対に確信犯よ! 絶対にそういう由来で名前がついたに違いないわ!」

先生が一度思いこむと、もう決して変えられません。

ユウ「あのですね」

マヤ「なに?」

ユウ「僕が思うに、毛がボーボーだから、ケボなんじゃないかと…」

マヤ「………」

ユウ「………」

マヤ「毛がボーボー? 」 

そこだけ強調しないでください。

 

マヤ「なるほど! 『毛がボーボー』と、『嘔吐』をかけてるのね!」

 

だから、嘔吐にこだわるのはやめてください。

 

マヤ「で、白いのがモッチ、と」

ユウ「………」

マヤ「こっちは分かるわよ? もち肌だからじゃない?」

さすがに肌質までは分かりませんけども。

マヤ「でも、この二匹、明らかに違わない?」

 

ユウ「………」

マヤ「明らかにクリエーターに差別されてない?」

ユウ「………」

マヤ「明らかに片方だけが、

人としての業や汚い部分を、一身に背負ったような感じじゃない?

 

そこまでの含みが持たされているとは思えません。

マヤ「ていうか、見てよ!? 黒い毛に、明らかにカラフルな『汚れ』が付着してない?
あれはどこまでが本人の模様なの? それともすべて、ゴミなの?」

そこまでは分かりません。

マヤ「というか、ゴミだとしたら、明らかに使い終わった

 

あの、本当にやめてください。

 

マヤ「そもそもこの番組って、『えいごであそぼ』でしょ?」

ユウ「はい」

マヤ「たぶん、モッチが教える単語は、『FLOWER(花)』とか『LOVE(愛)』とか、キレイなものばかりなのよ

ユウ「へ?」

マヤ「でも、ケボが教える単語は、

『DEATH(死)』とか『ENVY(嫉妬)』とか、『GREED OF WOMEN(女たちの欲望)』とか、

そういうダーティなものばかりに違いないわ

 

どんな差別ですか。

 

 

マヤ「ちなみに公式設定によると、汚いのが6才、キレイなのが3才なんですって」

公式設定以前に、その呼び方は単刀直入すぎます。

 

マヤ「これって、『大人になると、人はどんどん汚れていく』って暗喩してるんじゃない?」

 

さすがにそれは考えすぎです。

マヤ「たぶん、他にも、もう一匹くらい、9才くらいのキャラクタが出てくるんじゃないかしら」

ユウ「……どんな?」

マヤ「真っ黒なバブルスライムみたいな」

ありえません。

 

マヤ「名前は、『グロ』

 

だから、やめてください。

 「グロ」想像図

 

マヤ「………」

ユウ「………」

 

マヤ「ユウ先生、そのままで『グロ』、行けそうね

 

これ、訴えたら、勝てますか。    

 

マヤ「番組タイトルは、『どれいであそぼ』

 

僕で。    

 

 

………。

N○Kのみなさま、スカウトお待ちしております。

 

僕は先生との会話を振り返りながら、

一番汚れているのは、こういうことを話す僕たちなんじゃないかと思いました。

みなさま今後ともよろしくお願いいたします。