BIGBOYを知っていますか。

あなたは、BIGBOY(ビッグボーイ)というものをご存じでしょうか。

今夜は、男たちの熱くも切ない話をお届けいたします。

リオ「君は、BIGBOYというものを知っているか?

それは昼休みの食堂。

リオ先生は、真面目な顔で、そう言いました。
何人かの、おそらくその知識を知っていると思われるナースが、聞き耳を立てるようにこちらを見ました。

こういうとき、人は何て答えればいいんだろう。

リオ「日本語に訳すと、『大きな少年』なんだが

ユウ「………」

リオ「オカモト社が開発している、大きなサイズの男性用避妊具の名称だ」

あぁ、言っちゃった。

 

この瞬間、食堂中の視線が集まったような気がしました。

ユウ「先生、この場はマズイですので、医局で」

しかし先生は、話すのに夢中で、僕の言葉を意に介しません。

リオ「通常のは直径が32ミリのところ、これは37ミリなんだそうだ」

ユウ「そうですか」

リオ「見たことが、あるかい?」

ユウ「……は、はぁ…。薬局とかによくありますよね……」

リオ「これだよ」

まさか。

そう思ったときは、すでに時遅しでした。

先生はパッケージを出しました。

BIGBOY?ウマの絵を添えて。

あぁ、本当に出すとは。

リオ「………」

ユウ「………」

リオ「え、これ、どう思う?」

ユウ「………」

リオ「パッケージに、馬が描いてあるんだぞ? 」

ユウ「………」

リオ「いや、確かに馬は、それが大きいことで有名だ。
そのため、男性のそれが大きいことを、『馬並み』と表現することもある」

ユウ「………」

BIGBOY?ウマの絵を添えて。

リオ「だからって、パッケージに堂々と

馬の絵を描くこともないと思わないか!?
 」

心から同感です。

リオ「どれだけヘンか、男女逆で考えてみよう」

ユウ「………」

いや、なぜそこで男女逆に。

僕はそう思いましたが、もちろんその言葉は言えません。

リオ「想像してくれ」

ユウ「はい」

リオ「巨乳の女性向けのブラジャーが、
こんなパッケージに包まれて売られていたら、どう思う? 」

ユウ「………」

BIGGIRL?ウシの絵を添えて。

最悪です。

 

リオ「オカモト社がやっているのは、そういうことなんだよ! 」

ユウ「………」

リオ「『部長! この大きなサイズのゴムのパッケージ、どうしますか?』」

ユウ「………」

あ、オカモト社内の再現。

突然に大丈夫かと思いました。

リオ「『はぁ? デカいやつのパッケージ? 知るかそんなの! 馬でいいだろ、馬でよぉ!』」

なんて適当な。

リオ「『ですよね! 馬くらいでイイっすよねぇ!』」

ユウ「………」

リオ「こんなんで決まったに違いない

適当すぎませんか。

リオ「………」

ユウ「………」

リオ「まぁ、クレームを入れる男性はいないと思うんだけどな」

ですよね。

リオ「………」

ユウ「………」

リオ「しかし、はじめての女の子に『持ってる?』って聞いたとき」

ユウ「………」

リオ「 『持ってるよ』と言いながらこれを出されたら、
切なすぎて泣けるだろうな

泣けるでしょうね。

 

ていうか何よりも切ないのは、食堂でこんなことを話していることではないかと思いました。

あらゆる意味で人生の厳しさを感じつつも、みなさま今後ともよろしくお願いいたします。