メンタルクリニックを開業する精神科医8。
メンタルクリニック開業を決意する、僕。
そのため新宿で、参考のためにメンタルクリニックを訪問する。
2件目のクリニックで、出会った先生は…!?
数分後。
僕たちは、また別のメンタルクリニックの前にいました。
マヤ「じゃあ、入りましょう」
マヤ先生は、当然のように言いました。
僕は逆らうことができず、クリニックのドアを開けます。
今度はさきほどのクリニックとは違い、静かなヒーリングミュージックが流れていて、
雰囲気のいい場所でした。
マヤ「へぇ…」
リオ「おお…」
受付に、少し年配の男性がいました。
リオ「受付嬢が、男なんて認めん」
うん。
ていうかそもそも、男だったら「嬢」って呼ばないと思います。
僕はそう思いつつも、マヤ先生に言いました。
ユウ「…あの、さっきは『中が見たいから、中を見せて』と言って拒絶されましたけど、
今度は何て言うんですか?」
マヤ「うん。確かにあれはアヤしかったわね。
もっとアヤしまれないように言うことにするわ」
ユウ「え?」
次の瞬間、マヤ先生は、受付の男性に言いました。
マヤ「私、色々なものを見るのが好きなので、
中を見せてもらっていいですか?」
こっちの方がずっとアヤしいと思います。
マヤ「ちょっと好奇心で」
もうなんか、その行動は「好奇心」とかで片付けていいのでしょうか。
それを言い出したら、のぞきとかの犯罪も、すべて好奇心で正当化できるかもしれません。
心の中からツッこんでいると、受付の男性は、言いました。
受付「あ、いいですよ」
マジで。
この即答が、ある意味今回の新宿の旅で一番の衝撃でした。
マヤ「ありがとうございます!」
マヤ先生は嬉々としてクツを脱いで、スリッパに履き替えました。
先生は僕の方を向いて、言います。
マヤ「ほら、行くわよ」
ユウ「……は、はい」
というか、この受付の男性、一人で勝手に決めちゃっていいんでしょうか。
ドクターとかに、聞かないでいいんでしょうか。
そう思いつつも、まぁ、とにかく許可いただいたのは事実なので、僕たちは中に入ることにしました。
受付を通り過ぎると、「診察室」と書いた部屋がありました。
中を見ると、ヒゲをはやし、白衣を着た男性がいました。
マヤ「…ホームページで見たけど、たぶんここの院長先生よ」
ユウ「………」
その先生は、昼休みの時間らしく、イスに座って、一人でくつろいでいました。
マヤ「あ、失礼します」
リオ「どうも」
先生たちは、軽く一声をかけつつ、そのドアの前を歩き、通り過ぎていきます。
院長先生、我々を見て、「ビクッ!」としていました。
「え、誰!?」みたいな。
ユウ「す、すみません…」
僕もあわててあいさつをしつつ、先生たちの後を追います。
院長先生は、呆然と僕たちを見つめていました。
うん。
やっぱり受付の人の独断ですよね。
院長先生、何も把握してなかったですよね。
マヤ先生は、歩きながら言いました。
マヤ「なんかあの先生、驚く姿がハムスターみたいだったわね」
先生、それは言っちゃダメです。
リオ「自分の巣でくつろいでいたところを、
突然に捕食動物に見つかったハムスターみたいだったな」
すごく分かるんですけど、それも言っちゃダメです。
僕たちは、そんな言葉を交わしつつ、診察室の奧の廊下に進みました。
マヤ「へぇ…」
リオ「おおっ…」
ユウ「わぁっ…」
このクリニック、スゴかったです。
とても綺麗な内装で、ちょっとしたホテルにいるような気持ちになりました。
マヤ「へぇ…。こんなクリニックなら、心安らぐわね…」
リオ「確かに…。こんなところ、住んでみたいなぁ…」
確かに同感でした。
僕もいつか、こんな風な、入っただけで癒されるようなクリニックを作りたい。
そう思えるような内装でした。
しばらくしてから、マヤ先生は言います。
マヤ「じゃ、そろそろ飽きたし、帰りましょうか」
飽きたんだ。
リオ「そうだな」
ユウ「は、はい」
僕たちは、外に向かって歩き始めました。
当然ですが、僕たちが来た廊下を戻らないと、外には出られません。
するとやはり、さきほどの診察室の前を通らなくてはなりません。
診察室に近づくと、そのヒゲの院長先生、相変わらず同じポーズで、イスに座ってくつろいでいました。
マヤ「ありがとうございました~」
リオ「どうもー」
ユウ「失礼しました…」
僕たちが通りながらあいさつをすると、
やはり同じく、ビクッとした顔でこちらを見ました。
さっきと、まったく同じ反応でした。
「え、誰!?」みたいな顔をされていました。
マヤ「………」
リオ「………」
ユウ「………」
診察室を通り過ぎると、マヤ先生は言いました。
マヤ「中に3人の人間が入ったら、後でその3人の人間が出てくる、
ということを予想してなかったのかしら」
非常に切ないんですけど、その通りだと思います。
受付の前に来たとき、リオ先生は受付の男性に言いました。
リオ「なんか、院長先生らしき方が、驚いていたんだが」
すると、受付の男性は、言いました。
受付「先生、いつもそうですから」
だったらせめて、最初に教えてあげてください。
僕は非常に切なく感じつつ、クリニックを後にしました。
ていうかなんか、あの先生の反応に、僕と通じる姿を重ねました。
クリニックを開いたとしても、人間の立場や本質って、まるで変わらない。
そんなことを思いつつ、今後の未来について少し不安を抱える僕でした。
(つづく)
次に行くのは池袋! そこでリオが語った、クリニックの法則とは!?
次回更新をお待ちください!
そしてゆうメンタルクリニック、サイトが正式公開です。
開業も6月からということで、無事に決定いたしました。良かった。
見てくださった方、本当にありがとうございます。
ゆうメンタルクリニック ご興味ある方はぜひ。
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