メンタルクリニックを開業する精神科医9。

メンタルクリニック開業を目指す自分。
次に目指した場所は、池袋だった…。

そこで三人が見たモノとは!?
 

 

リオ「次はどこだ?」

ユウ「あ、じゃあ、池袋で…」

リオ「そうか。じゃ、次の日曜だな」

マヤ「えぇ。待ち合わせはいけふくろう前でね」

ユウ「は? いけ…ふくろう?」

聞き慣れない言葉に、僕はとまどいます。

マヤ「………」

ユウ「………」

マヤ「渋谷と言えば、ハチ公前! 新宿と言えば、アルタ前!」

ユウ「はい」

マヤ「池袋と言えば、待ち合わせ場所は、いけふくろう前よ!」

 

明らかに、一つだけダジャレっぽいところが、微妙に知名度の差を物語ってる気がするんですけども。

ユウ「あの、それって…」

マヤ「ええっ! 池袋に来る人なら、誰一人として知らない人間はいない、いけふくろうを知らないの!?」

ユウ「………」

リオ先生も言います。

リオ「池袋で一番有名なフクロウだぞ!?」

 

フクロウというジャンル限定で一番になられても。

ていうか池袋で二番目に有名なフクロウが存在するんでしょうか。

 

いずれにしても、心底驚いてる二人の前に、僕は何も聞くことができませんでした。

たぶん裸の王様の心境って、こんな感じだったのかもしれません。

 

そして、次の日曜。

僕は少し早めについて、いけふくろうを探します。

しかしどこにも、案内板などはありません。

とりあえず歩いている人に聞いてみました。

ユウ「あの、いけふくろうってどこですか?」

通行人「…さぁ…?」

ユウ「いけふくろうって」

通行人「ちょっと知りません」

 

なんだか、誰も知らないんですけど。

とりあえず僕は、駅員さんに聞いてみることにしました。

 

ユウ「あの、すみません。いけふくろうってどこでしょうか?」

すると、駅員さんは言いました。

 

駅員「は? いけぶくろは、ここですよ?」

  

 

通じてない。

そもそも、「いけふくろう」って言葉自体が、認識されてない。

 

それにたぶん今の僕って、日本にいつつ、

「日本ってどこですか?」

って聞いた人間と同じレベルにされてる。

 

なんだか、色々と切なくなりました。

そして、とにかく池袋中を駆け回って、さらに20分後。

僕はやっと、それらしきものを見つけることができました。
参考 いけふくろうの壁紙だそうです。どれだけの需要あるか分かりませんけども)

待ち合わせには5分遅れてしまいましたが、先生たちは15分遅れてきたので、まったくもって大丈夫でした。

 

リオ「で、何か物件、見つけて来たのか?」

ユウ「は、はい。ネットで、とりあえず何件か」

マヤ「じゃ、とりあえず見てみましょう」

 

そして僕たちは、不動産屋さんに合流し、物件を見てみることにしました。

 

リオ「まず、注意しておきたいんだが」

ユウ「な、何ですか?」

リオ「クリニックを開く物件には、色々と重要条件があるんだ」

ユウ「条件?」

リオ「あぁ。そのうち大切なものの一つが、『同じビルに飲み屋がない』ということだ」

ユウ「飲み屋が…!?」

リオ「飲み屋があると、人が集まるだろう? 自然、騒ぐ人間なども増える。
すると患者さんにとっては、あまり安らげない場所になってしまうんだよ」

ユウ「な、なるほど…」

リオ「他にも、消費者金融があるビルも、あまり良くないな」

ユウ「そうなんですね…」

 

そんな話をしながら、僕たちは物件まで歩いていました。

  

不動産屋「まず、こちらの物件ですが、同じフロアに、別の店舗が入ってるんですよ」

ユウ「別の店舗?」

 

リオ「それは、飲み屋かい?」

不動産屋「違います」

ユウ「じゃ、じゃあ、消費者金融とか?」

不動産屋「違います」

 

あぁ、じゃあ、大丈夫。

僕がそう安心しかけたとき、エレベーターは、そのフロアにつきました。

 

パチーン。

パチーン。

 

石の音と、たくさんの歓声が響きます。

 

碁会所でした。

 

いったいどこに、こんなにたくさんのご老人がいたの!?

というくらい、多くのおじいさんがいました。

僕たちは思わず無言になります。

 

 

マヤ「………」

ユウ「………」

 

マヤ「ヒカルの碁の影響かしら」

 

それはありません。

たぶんこのマンガが出る数十年以上前から、ずっとやってたと思います。

 

ユウ「あの、先生。クリニックの隣に碁会所は、アリでしょうか」 

リオ「………」

ユウ「………」

 

中から、

「勝ったー!」
「負けたー!」
「ちっくしょう!」
「がっはっは! いただきー!」

という大歓声が響いてきます。

 

リオ「アリだと思うかい?」

 

ナシだと思います。

  

 

瞬時に前途多難な池袋!

果たして次にたどりついた場所とは!?
そしてさらにリオ先生が話す、新たな条件「500メートルルール」とは!?

待て次号!

(つづく)

まったり続いてます。はい。
みなさま今後ともよろしくお願いいたします。