髪は男の命です。~サムソンとデリラの物語・後編
すっかり夏ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
僕はこの夏を利用して、「七級建築士」の資格を取りました。
七級建築士になると、国土交通省の許可のもと、ダンボールで小学生の秘密基地を作ることができるようになります。
しかし最近作った秘密基地が、耐震構造に問題があると近所の小学生から指摘を受け、八級建築士に格下げされてしまいました。
八級建築士になると、マッチ棒を並べて小さな家を作ることしかできなくなります。もう一気に格下げ。夏休みの工作レベルです。
こんなことを考えているあいだに、もう夏は過ぎかけている。
そんな切ない日々を感じつつ、今夜もセクシー心理学の世界をお届けします。
今夜は旧約聖書から、「サムソンとデリラ」の話、後編です。
あらためましてこんばんは。
そして今夜も夏真っ盛りで、セクシー心理学の世界をお届けします。
◆ 前回までのあらすじ。
英雄サムソンは、とにかくムチャクチャ。
ライバルであるペリシテ人のことを、ひったすら殺します。
これにたいして、ペリシテ人がとった究極の対策とは!?
◆ サムソンとデリラ、後編。
そんなこんなで、かのサムソン。
彼は前回の事件のあとに、「デリラ」という女性を好きになります。
ここで重要な事実を言うんですが。
実は彼、ものすごく女に弱いのです。
というか、たいていの物語や神話の主人公って、「女に弱い」気がします。
まぁ、「女に弱い属性」をつけておけば、話を聞いた女性も、
「アラ? 強い男性なのに、かわいいところあるのねウフフ」
と、聞いていて悪い気はしませんし。
また男性的にも、それが「スキ」や「ギャップ」として感じられ、「憎めないヤツじゃないか」と思えるはずです。
さらに必然的に、お色気なシーンも増えるため、聞いていて楽しい話にはなります。
そういうわけで、好感度を上げるためにも、物語において「女に弱い」は必要なのかもしれません。
ですので僕も「女に弱い」ことを前面にアピールしたいんですが、これはなぜか好感度に結びつきません。
たぶんギャップがまったくないところが問題なんだと思います。
◆ 裏切るデリラ。
さて、それを知ったのが、サムソンを憎むペリシテ人たち。
彼らはデリラに言いました。
「サムソンが、あれだけの馬鹿力が出せるのには、何か秘密があるに違いない。その秘密を教えてくれたら、銀貨を1000枚以上やろう」
ペリシテ人は、とにかく女性に頼るのがデフォルトです。
さて前回も話しましたが、サムソンの力の秘密は「髪の毛」です。
それをずっと切らないからこそ、彼はあれだけの怪力を保てるのです。
ていうか切る切らない以前に、ハゲたらどうなるんだろうとか思うんですが、彼はそういうこととは無縁の男性だったようです。
さてまぁ、いずれにしても、デリラはペリシテ人たちに、言いました。
「そんなにもらえるの!? えぇ、いいわよ」
ここで快諾しちゃうところがポイントです。
そもそも前回の妻ですら、サムソンの答えをためらいなく彼らにバラしてしまったわけですし、サムソンは意外に女運に恵まれていないのかもしれません。
◆ 話を聞いたら、即実行。
そしてデリラは、ベッドの中で、サムソンに言いました。
「あなたって、すっごい力を持ってるわよね…」
「そうか? いやいや、それほどでもないよ?」
「でも、私、すごく怖いの…。いつかあなたが興奮してしまったときに、私がメチャクチャにされそうで…」
「い、いや、そんなこと…」
「だから、お願い。あなたの力の秘密を教えて。それを知ったら、私も安心できるから…」
「…! そ、それはさすがに、言えな…」
「私のこと、愛してないの!? ひどい! 私がどんなに怖いか…!」
「うっ…!」
女性の、
「○○して」⇒「それはちょっと」⇒「私のこと愛してないの!?」
という三段論法は、古来からすごく有力だったようです。
いずれにしても、サムソンは根負けして、つい言ってしまいます。
「7本の弓のツルで、俺のことを縛ったら、俺は力を出せなくなるんだ」
はい今、ウソついた。
すごくシンプルに、サラッとウソをつきました。
そして、次の日。
デリラはそのことをペリシテ人たちに告げ、サムソンが寝ているうちに、7本の弓のツルで、彼を縛りました。もう即実行です。
その上で、叫びました。
「起きて、サムソン! ペリシテ人が来たわ!」
「なぁにぃ!?」
サムソン、たちまちのうちに、ブチブチッとツルを切りました。
瞬時に逃げ出すペリシテ人。
サムソンとデリラは、無言で向かい合いました。
「………」
「………」
「え、ウソついた?」
「ていうか、縛った?」
なんていうか、お互いに気まずい。
しかしデリラは言いました。
「あなたが、本当に力を失うか、試したくなっただけよ?」
「そっかー」
「でも、ヒドイ! ウソだったなんて! やっぱり私のこと愛し(以下略)」
「いやいやいやっ! 教えるから!」
そんなやりとりを経て、サムソンは言いました。
「実はまだ使ったことのない、新しい綱で縛られたらダメなんだ」。
次の日デリラは、ばりっばりの新品の綱で、サムソンを縛りました。
サムソンはまたブチブチ切りました。
「………」
「………」
「え、またウソついた?」
「ていうか、また縛った?」
みんな懲りない。
限りない予定調和です。
何よりサムソンも、それでもデリラの元から離れないところが素敵です。
デリラがそれだけ魅力的だったということでしょうか。
そういうことに。
◆ 二度あることは三度ある?
しかしさらに懲りないことに、サムソンはそのあともウソをついて、また直後にブチブチやります。
「………」
「………」
「もう、いい加減にしてくれない?」
「いや、それお前だよ!」
サムソン、本当に懲りないです。
そしてデリラはついに泣き始めます。
「3回もウソついてダマすなんて! もうあなたのことが信じられない! 今度こそ本当のこと言ってよ!」
「うっ…。うううっ…!」
しかたなく、サムソンは本当のことを、言ってしまいました。
「俺の髪の毛を切ったら、俺は力が出なくなるんだ」
次の日、ばっさり切られました。
サムソンも、ここまで露骨に試す女だと分かってたわけで、なんか対策を練っておけば良かったのにと思うんですが(ヘルメットかぶって寝るとか)、それができないからサムソンです。
言うまでもなく、力が全く出せなくなったサムソン。
ペリシテ人は、彼をたちまち捕縛してしまいました。
さらに彼の目をえぐります。激しいです。
そして青銅の足かせをつけて、彼を牢に入れました。
それから彼は、牢で強制労働をさせられる日々でした。
ひどい仕打ちではありますが、それまでペリシテ人を数え切れないほど殺してきたサムソンを考えると、逆に殺されないだけマシだったのかもしれません。
◆ サムソンの結末。
そして、長い時間がたち、ペリシテ人の祭りの日がやってきました。
彼らは、「見せ物」として、サムソンを牢から連れ出してきました。
その場に集まった3000人以上は、サムソンの哀れな姿を見て、腹を抱えて笑いました。
しかし。
彼らは、誰一人として、気づいていなかったのです。
時間と共に、サムソンの髪の毛が伸びていたことを。
「おりゃああああああああっ!!」
「………え?」
サムソンは目が見えませんが、そこはもう、特別な怪力。
近くにあった大きな柱を引き抜き、振り回します。
それだけで、その場にいた人々は皆殺しでした。
最後に柱が支えていた神殿は倒れ、サムソンは多くのペリシテ人たちと共に、そこで死にました。
愛に生き、力に生きた男、サムソンは、最後の最後まですべてを出し尽くし、そこで炎のような生涯を終えたのです。
………。
最後だけ物語っぽくまとめようとして失敗した雰囲気を感じます。
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◆ 今回のまとめ。
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○ 本当のことを言う相手は、選びましょう。
○ 男のウソは、なるべく信じてあげましょう。
というわけで、サムソンとデリラの話、いかがでしたでしょうか。
この物語のメインテーマは、「悪女であると分かっていても、それに逆らえない男の切なさ」でしょうか。
ちなみに自分だったら、たぶん途中でバスト関連の何か入れると思います。
「バストに挟まれると、力が出なくなる」みたいな。
まぁ、実際男はみんな出なくなると思うんですけど。
ウソはついてない。
なんていうか、落語の「まんじゅうこわい」に近い気がしてきました。
サムソンというより、バストに挟むソン。
………。
このネタが何より寒ソンなんじゃないかと思いつつ、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
(完)
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