徒然草から法然上人の話。

あなたは、仕事や勉強中に、眠くなってしまうことはありませんでしょうか?
集中しなければいけないのに、どうしてもダレてしまうことはありませんでしょうか。

今夜はお話しするのは、そんなときに参考になる話。
かの古典「徒然草」から、こんなトピックをお届けします。

 

昔々、あるところに、法然上人という、とても立派なお坊さんがおりました。

その彼に、ある修行中のお坊さんが、聞きました。

「極楽に行くためにお経を唱えようとすると、どうしても眠くなってしまうのです。こんなときは、いったいどうすればいいんでしょうか?」

と聞きました。

うん。気持ちは分かります。

お経を「勉強」や「仕事」などに置き換えると、たぶんあなたも、同じような悩みがあるのではないでしょうか。

すると法然上人は、こう答えました。

「だったら、眠くないときに、やりなさい」

 

いや、当たり前じゃん!

…と思いますでしょうか。

でもこの答え、意外に奥が深いように思えます。

お経を唱えたいのに眠くなってしまうのは、仏様にたいする気持ちが、あまりないということ。
そんなときに、いくらお経を唱えても、ムダ。

そんな非効率的なことをせず、さっさと眠ってしまう。

そして心底、仏への気持ちが強まって、お経を唱えたい!という気持ちになったときだけやる方が、ずっと効率がいいよ、と言っているわけです。

こんな風に、「リラックスして、気軽に行こうよ」というのが、法然上人の教えです。

◆ 眠さをなくしても…?

確かに、言いたいことはすごく納得できます。

でも。

このお坊さんが「寝た」として、目が覚めたら念仏を唱えることができるのでしょうか?

おそらく、その答えはNOでしょう。

「この仕事は、明日にやろう…」
「勉強、明日の朝にしよう…。その前に眠ろう…」

こう思って寝たとしても、次の日には「眠くないけど、やる気が湧かない」という状態のことが、ほとんどのはずです。

実は心理学では「衛生要因」と「動機づけ要因」というものがあります。

「衛生要因」というのは、その行動をジャマする要因のこと。

「給料が安い」とか「眠たい」などです。

「動機づけ要因」というのは、その行動をするプラスの理由。

「面白い」「やりがいがある」などですね。

そして心理学者であるハーズバーグは、この2つは「完全に別である」と述べています。

ひと言で言うなら、「やる気と不満は別物」。

不満の理由をいくら解消しても、そのままやる気には結びつきません。

「お腹が減ったから、仕事できない」という人に食事を与えても、やはりダラけるでしょう。
「給料が安いから働かない」という人に給料を与えても、変わらずすぐにサボるはずです。

同じように、「眠たいから念仏ができない」という人を眠らせても、おそらく即、念仏を唱え続けられるわけではありません。

ただ法然上人は、この「寝ちゃえばいいよ」という言葉で、「もっとリラックスして念仏を唱えなさい」と言いたかったのではないでしょうか。
それによって、おそらくこのお坊さんが抱いてる、念仏への疲れたイメージを取り除いた…。そのように考えられます。

気持ちさえ軽くなれば、少しずつ楽しみだって見つかるものです。

いずれにしても大切なのは、その行動の中に「喜びを見つける」こと。

休みたい。
お腹が減った。
退屈だ。
孤独だ。

こんな不満は、「見せかけ」に過ぎません。

それをいくら解消しても、幸せや行動には、結びつかないものなのです。

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◆ 今回のまとめ。
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○ 疲れたときは、まず寝ましょう。

○ ただ、それだけで仕事や勉強には集中できるわけではありません。

○ 大切なのは、その行動自体に「楽しみ」を見つけること。

○ マイナスの理由をいくら解消しても、プラスがなければ動きません。

○ まずはリラックス。その上で、喜びや楽しみを見つけましょう。

 

◆ さいごに。

僕の好きな言葉に、こんなものがあります。

「自分はいま幸福かと自分の胸に問うてみれば、
 とたんに幸福ではなくなってしまう」

                  J・S・ミル(イギリスの哲学者)

 

幸福は「状態」ではありません。

大切なのは、ただ何かに夢中になっていること。
その行動の中にしか、幸福は存在しないんですよ。

(完)