平中の恋。 すっぱいブドウ

あなたは、大好きな女に振り向いてもらえないときに、どうしますか?
その男は、恐ろしいことをしようとしたのです…。

今夜は、今昔物語集の中から、ややアブノーマルな話をお届けします。
ほんのちょっとオトナ向けです。ご注意を。

 

こんばんは。ゆうきゆうです。
今夜もメルマガ「セクシー心理学」から、こんな話をどうぞ。

◆ プレイボーイの愛した女。

あるところに、平定文という男がいました。

彼は都でもプレイボーイとして有名で、通称を「平中(へいちゅう)」と言い
ました。

へいちゅう。

なんか進化してピカチューになりそうと考える僕は、ちょっぴりポケモン世代
です。

そんなモテモテの彼は、あるとき「侍従の君」という女を好きになりました。

まぁ、「侍従の君」というのは「侍従をしている女性」くらいな意味。
今風に言えば、「メイド喫茶勤務のA子さん」ということになります。
ぜんぜん違いますか。

とにかく彼はその侍従の君への思いをつのらせ、何度もラブレターを送りまし
た。

しかし、彼が何度送っても、返事は来ません。
男ならこういう体験、結構あると思います。

そして彼は思いあまって、手紙にこう書きました。

「もしこの手紙を見たのなら、ただ『見た』(古文では「見つ」)と、ひと言
だけでもいいので返事をしてください」

切ないです。

僕の友人も「見た証明に、そのまま返信だけでもしてほしい」とメールしてい
たことがありましたが、それすらもスルーされていました。

いずれにしても、「返事を強制される」ほど、人はかえってそれがイヤになっ
てくるもの。当然といえば当然の結果です。

それでも、ただ返事を心待ちにする平中のもとに、なんと侍従の君からの手紙
が届いたのです!

大喜びで手紙を開く、平中。

すると、彼の手紙から「見た」という文字を切り抜いて、ただそれを貼り付け
ただけの紙が入っていました。

切なすぎです。

日本史上、最初で最悪のコピー&ペーストかもしれません。

どう考えても、書くより、切って貼る方が手間だと思うんですけども。

「てめえに読ませる文字は一文字たりとも書かない!」

という強い意志を感じます。徹底しています。

◆ 平中、うしろー!

そこで彼はさらに思いあまって、彼女の家に忍び込むことにしました。
そう。「夜ばい」です。

この時代、「最初のデート」=「夜ばい」は普通でしたが、それでも一応、二
人の了承が取れてからです。

それを省いて、とにかく実力行使に出ようとしたわけです。

そして、その夜。
彼はついに、彼女の寝室に入ることに成功しました。

ようやく会えた、愛しい女。

「会いたかった…!」と言いながら、平中は彼女を抱きしめました。

すると、嫌がるかと思えた女は、微笑みながら、言いました。

「まぁ…。わざわざ来てくれるなんて、光栄です…」

思わぬセリフに驚き、そして喜ぶ平中。
彼女は言葉を続けます。

「…あ、そうそう。玄関のカギをかけるのを忘れてましたわ。ちょっと待って
てくださいね」

「あ、うん! 早くいっておいで!」

 

待てーーー!

それは待てーーー!

なんかもう、読んでる我々の方が、その後の展開が読めそうなんですが。

もう、言うまでもありません。

女はそのまま、逃げてしまいました。

女性に「ペットにエサをあげわすれた」という理由で帰られたことのある自分
には、心が痛すぎる話です。

◆ すっぱい女。

せっかくのチャンスまでムダにしてしまった平中。

もう、彼女は決して、自分の方を振り向いてはくれないだろう。

そう思うも、彼女への炎は燃えさかるばかりです。

ここで心理学では、「すっぱいブドウ」という考え方があります。

キツネが甘そうなブドウを見つけた。
でも、どうしても取れない。

そんなときに、

「ふん、あんなすっぱいブドウなんて、いらないよ!」

と考えたという童話に由来します。
ショックを和らげるため、考えを変えるわけです。

ここで彼も、同じように、

「あの女は、思ったほどイイ女じゃない」

と考えようとしました。

しかし。

いくらそう考えようとしても、それは不可能。

目を閉じるだけで、彼女の顔が浮かんできます。
横になるたびに、一度だけ抱きしめた、彼女の感触を思い出します。

こうなると、男の心は狂います。

彼はブドウをすっぱくするために、最悪の手段に出ました。

 

愛しいあの女だって、人間だ。

トイレだって、行くだろう。

 

そう。

「それ」を見てしまえば、百年の恋も、冷めるに違いない。

 

さぁ!

彼の行った、恐ろしい行動の結末は!?

果たして彼が目にしたモノとは!?

 

次号「開けちゃだめぇ!」をお待ち下さい!

(つづく)

そして、ちょびっと次回の先取りです。

そう決めたら行動は早い平中。

彼は再び、彼女の屋敷に忍び込みます。
二度も侵入を許してる時点で、なんら学習能力がない気がしますが、
そのあたりはツッこまない方がいいのかもしれません。

さてこの時代、「トイレ」なんてものはありませんでした。

そのため、ある程度身分の高い女性は、部屋の中で小さな箱の中にして、
それを家来などに片付けさせるのが一般的でした。

ですので「流される」心配はありません。

さぁ!
条件は(嫌な意味で)そろいました!

彼は廊下に隠れて、家来が持ってきた箱を奪い取りました!

そして、夢中で開けました!

すると!

 

中から、信じられないほどに、いいにおいがただよってきたのです…!

その理由とは!?

次号をお待ち下さいませ。
まぁ、有名な古典なので、知っている人も多いと思うんですが。

いずれにしても、ここまで遊びに来てくださって、本当にありがとうございました。