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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。 特別編
                         ~ナンパ勝負をする女医。
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<登場人物紹介>
◆マヤ◆天下無敵の精神科女医。どんな人の心も思いのままに操る「セクシー心理学」を
自在に使う。しかしなぜかオトコはできない。
◆リオ◆分析心理学を極めた、流浪の精神科医。会話を一言交わすたびに、相手の秘密を
3つは覗けるほどの分析力。女性に目がない。
◆ユウ◆虐げられるために生まれたような男。丁寧だが内気で弱気。
特技なし、趣味盆栽。好きな言葉、「生真面目」。
(このドラマは、実体験をもとにアレンジを加えた、フィクションだと思われます。
名称の酷似した実在の精神科医たちには、たぶんほとんど一切関係がありません)

<第3夜> マヤとリオが、ナンパでショーブ!? (キャスト…ユウ・マヤ・リオ)

リオ「さあ、どのオンナにするかなぁ…」
マヤ「どのオトコがいいかしらね…?」

二人がポキポキッと指を鳴らしながらそう言うのを聞きながら、
「僕は、どうして今ここにいるんだろう」と思いました。
…そう、あれはつい、1時間前のことでした。

<1> ゴージャスな精神科医、リオ登場!

マヤ「ねえ…お正月、何してた?」
ユウ「一人で夜勤です…」
マヤ「クリスマスは?」
ユウ「一人で夜勤です…。マヤ先生は…?」
マヤ「同じよ…」

時は2001年1月某日、精神科医局。本来ならめでたいハズのその時に、
僕とマヤ先生は異常なほどに落ち込んでいました。

「よっ! いるかい!?」
その静寂を、いきなり突き破ってきた声。慌てて振り向くと、そこには一人の男性が
立っていました。
マヤ「リ…リオ!? リオじゃない!」
リオ「久しぶり! 元気だったか? 相変わらず『セクシー♪』とか言ってんのか?」
マヤ「あなたこそ、未だに『ゴージャス♪』なんて言ってるんでしょ?」

どういう知り合いだよ。
ユウ「あの、マヤ先生…。どなたですか?」
マヤ「でも、どうしてここにいるワケ?」
リオ「や、ちょっと保険証の手続きに来てな。変わってないなぁ…本当に」

聞いちゃいない。
ユウ「マヤ先生!! どなたですか?」
マヤ「あ…いたの?」

忘れてんなよ!
リオ「ん? 誰だい? このTBSの安住アナみたいな控えめな男は」

余計なお世話だよ!
僕はそう思いましたが、初対面なので、口には出せませんでした。
リオ「はじめまして! 俺は流浪の精神科医、リオだ、よろしくっ!」
マヤ「リオは私と同期なのよ」
ユウ「へえ…」

<2> リオの分析! 恋人の有無の見分け方!?

リオ「しっかし…何だよ、21世紀だっつうのに、この暗い雰囲気は…」
マヤ「いいじゃない、ほっといてよ…」
リオ「はーん…。マヤ、お前まさか、未だにオトコ作れてないだろ?」
マヤ「…へえ…。得意の分析心理学?」
リオ「そうだよ。分析心理を極めた俺の前では、どんな人間でも素っ裸と同じだ。
俺にかかれば、恋人の有無から初体験の年齢まで、全部分かる。さらに3サイズから、
アレの形状まで…」

それは、心理っていうより、スケベなだけだろ。
そう思う僕を尻目に、二人の会話は続きます。
マヤ「で、どうして私に今、オトコがいないと?」
リオ「そうだな…理由はたくさんあるが…。例えばその赤いブラウス。
暖色系は、服だけでも盛り上げたいと言う気持ちの表れだ。赤い服を着ている
オンナは、80%以上、オトコがいない」
マヤ「…極論よ…」
リオ「さらに、その首につけている、黒いチョーカー」
マヤ「はいはい。『チョーカーは、首輪の象徴だから、縛り付けられたいっていう
欲求を表してる』とか言うんでしょ? 悪いけど、これは私のポリシーで…」
リオ「そのチョーカー、よく見ると少しだけ右にズレてる。着けるときに、
『右側』に意識が集中してしまった、ということだ。知っての通り、分析心理では、
『左側』は過去や事実、『右側』は未来、もしくは空想を表してる」
ユウ「そ、そうなんですか?」
リオ「過去のことを思い出すとき…君は無意識に『左側』を向かないかい?」
ユウ「た、確かに…」
マヤ「だから、これを着けていたとき…すなわち、オシャレという、自分の全体像を
見直し、装っていたときに、無意識に未来や空想の『右側』に注意を向けてしまった。
すなわち、今の生活や恋愛に、満足を得ていない、ということだ」
マヤ「……」
リオ「ゴージャス…。当たったようだな?」

ユウ「じゃ、じゃあ僕はどうですか?」
すると、リオさんは僕の方を見もせずに、こう言いました。
リオ「君は、いないだろ?」

今、本当に分析心理学を使ったか!?
マヤ「はあ…。さらに磨きかけてるみたいね…」
リオ「へへ、六本木での修行は、伊達じゃないぜ?」

…どんな修行だよ。
そして、まさに僕の存在などアウトオブ眼中(死語)のように、二人の会話は
進んでいきました。

<3> 勝負のとき!

マヤ「でも、一個だけミスがあったわよ? 私は、恋人が『作れない』んじゃなくて、
『作らない』のよ。だって、私を満足させるような、いいオトコがいないから。
そういうのが現れたら、絶対にすぐに落としてみせる自信はあるわよ」
ユウ&リオ「えー?」

ばきッ!!
ユウ「ぐはっ!」

…何で僕だけに肘打ちが来るんだよ…。
リオ「…そうか…」
マヤ「ああ! 私の魅力のスゴさ、こんなトコじゃ見せられなくて残念だわぁ!」
リオ「へえ…。じゃあ、見せられる場所に行くかい?」
マヤ「え?」
リオ「今日はもう、仕事終わりだろ? お見合いパーティがあるんだけど、来ないか?」
マヤ&ユウ「お見合いパーティ!?」
リオ「そう。そこなら、いいオトコもいいオンナも満載だ。何たって、都内最大級の
パーティだからな。スッチーから弁護士、重役秘書からIT企業家まで、あらゆる
ヤツらが集まる。マヤ先生の魅力なら、よりどりみどり、だろ…?」
マヤ「の、望むトコロよ!!」
リオ「まあ、魅力溢れる上に、分析心理を極めた俺に、勝てるとは思えないけどな」
マヤ「はぁ!? 魅力も心理知識も、私の方が上だってこと、見せたげるわよ!」
リオ「ほう…。じゃあ、何か賭けるか?」
マヤ「そうね…。負けたら豪華ディナーを奢るってのはどう?」
リオ「いいぜ? じゃあ、より「いいオトコ・いいオンナ」をゲットした方が勝ちだな?
万が一俺が負けたら、俺が何でも奢ってやるよ」
マヤ「億が一私が負けたら、私たちが何でも奢るわよ」

『私たち』って、僕も入ってるのかよ!!
ユウ「あの、僕はちょっと急用が入っているので…」
マヤ「でも、そこってそんなに、いいオトコやいいオンナが来るの?」
リオ「ああ。前に行った時は、顔は美少女、ボディはむちむちぷりんな、性格もキュートな
19歳の女子大生だって来てたぜ?」
ユウ「急用がなくなったみたいなので、僕も行かせて頂きます」

…そこまで思い出すと、僕は再び現実に戻りました。
1000人近くの男女。そして、きらびやかに飾り付けられた、豪華な会場。
間違いなくここは、お見合いパーティの現場です。
そして、目の前には、明らかに他の人とは違う雰囲気を発している二人がいました。
リオ「お! いい女! あの仕草からして、職業は看護婦、今までの経験人数は、
およそ6・7人といったところか…」
マヤ「あ! カッコいいじゃない? あのタイプは典型的なA型人間。
積極的な姿勢を肯定しながら近付けば、カンタンに落ちるわね…」

ブツブツ分析すればするほど、明らかに周りから浮いていく二人。

そういえば、マヤ先生のセクシー心理学の前書きに、こんなコトが書いてあったのを
思い出しました。
「心理学より何より、大切なのは、心! そして愛の気持ち!」

リオ「オンナ! オンナ!!」
マヤ「勝ったら豪華ディナー! 豪華ディナー!!」

…愛をください…。

さあ! 果たしてナンパ勝負に勝利するのは、一体誰なのか!?
そして、本当に心理学を応用すれば、いい男・いい女がゲットできるのか!?
緊張の後編に続く!!

(つづく)

<前回までのあらすじ>
お見合いパーティで、豪華ディナーを賭けてナンパ勝負をすることになった、
精神科医マヤとリオ。
「一見しただけで、職業から初体験の年齢まで全て分かる」という、心理分析を
極めた男、リオに、果たして我らが女医マヤは勝つことが出来るのか!?
そして、常に流されつづける研修医、ユウに未来はあるのか!?

<第4夜> ナンパ勝負 後編
ホントのハートは、ダレのモノ? (キャスト…ユウ・マヤ・リオ)

<1> マヤの挑発! リオのハンデ!?

ユウ「す、すごく綺麗な髪をしてますね…」
リオ「違う! この女の場合は、こんなグシャグシャの髪じゃなくて、
もっと自信を持ってそうな、手を誉めるんだよ!」

本人の目の前で言うなよ。
僕は心の中でそう突っ込みながら、怒って去っていく女性を見つめました。
大体、何でこんなコトになってしまったんだろう。
僕の頭に、さっきの会話がよぎりました。

マヤ「ね・え~。このままじゃリオ先生の勝ちは目に見えてるから、ハンデ付けてよ、
ハ・ン・デ♪」
リオ「いいぜ、もちろん。チョンマゲでも、全身タイツでも、どんなカッコのハンデ
付けても、俺の勝ちは決まってるけどな」
マヤ「じゃあ、このユウ先生とペアで行動して♪」
リオ「それじゃ負ける」

俺の存在は、全身タイツよりもマイナスかい。
そのことを思い出している僕にヘッドロックをかけながら、リオ先生は言いました。
リオ「言っただろーが! ナンパの初歩の初歩は、誉めること! そのために
心理分析で『相手の最も自信を持ってる部分』を見つけることだって!」
ユウ「そんな一瞬のうちに、心理分析が身につきませんよ…」
リオ「成せばなる! 成さねばなぐる!」

『成さねばならぬ』だろ。
僕はそう思いながらも、その言葉を飲み込むのでした。
リオ「くそっ…。『それで勝ったら、何でも言うコト、聞いたげる♪』なんていう
マヤの口車に乗るんじゃなかった…。しょうがないな…。じゃあ、君にも分かる、
簡単な心理分析テクニックを教えようか。名付けて、『サルでも分かる心理分析』」
ユウ「…は、はい…」
リオ「いや違うな。サルじゃ賢すぎる…。『クラゲでも分かる心理分析』…。
違う…『ミジンコでも分かる心理分析』…いやいや、『ゾウリムシでも…』」

いいから早く教えろよ。
僕は心の中で湧き上がる叫び声を、静かに飲み込みました。

<2> リオ直伝! 目は心のウィンドウズ!?

リオ先生は、しばらく考え込むと、こう言いました。
リオ「…結局、『アオミドロでも分かる光合成』にした」

心理分析だろ。
リオ「なぁ、さっき、医局でマヤに言ったこと、覚えてるな?」
ユウ「あの、恋人ができない、とか、行き遅れ、とかですか?」
リオ「そこまでは俺も言ってないぞ…。俺が言ってるのは、マヤのチョーカーの
向きの話だ」
ユウ「ああ…。確か、マヤ先生のチョーカーが、右を向いていたから、
現状に満足していない、っていう…」
リオ「そう。これは『神経言語学プログラミング』という分野の話なんだが、
目の向きには、思考の内容が、ダイレクトに表れて来るんだ。
正確には、本人から見て『左上を見ているときは過去』、
『右上を見ているときは未来や空想』のことを考えている」
ユウ「え? じゃあ、左下・右下は?」
リオ「『左下は聴覚』、『右下は触覚』をイメージしているんだ。これさえ分かれば、
相手の心は、読めたも同然だろ?」
ユウ「…は、はあ…」
リオ「いいか? 例えばある女に、電話番号とか、彼氏の有無とかを聞いたとする。
その時に、相手が左上を向いていたなら、今までの出来事、ひいては現実のことを
思い出してる証拠。すなわち、本当のことを話しているって事だな」
ユウ「……」
リオ「そして右上を向いていたなら、それは空想を考えているということ。
すなわち、ウソをついている、ってことだ」
ユウ「すごい…」
リオ「さらに言うなら、その女に『君を抱きたい』って言ったとき」
ユウ「は、はい…」
リオ「その女が、右下を向いていたなら、明らかにその時のシーンを想像している。
男の手触り、愛撫される感触…。それはもう、すでに落ちた証しだ」
ユウ「はあ…。万能なんですね…」
リオ「でも、終わった後に、『すっごく良かったぁ』って言いながら右上を
見てる時は、とってもショックだけどな…」
ユウ「泣けてきますね…」

<3> セクシーメソッドならぬ、ゴージャス…

リオ「とりあえず、ここまで覚えたな?」
ユウ「はい!」
リオ「そういえば、マヤはセクシーメソッドとかいうのを、書いてるんだって?」
ユウ「は、はい…」
リオ「じゃあ、この『質問するたびに目をチェックして、心を完全に把握する方法』、
これこそが、俺様のゴージャスメソッド、『ダイレクト・アイズ』だ!!」

いい年して何を張り合っているんだろう。
僕はそう思いましたが、危うくその言葉を飲み込みました。
リオ「よし! 早速やってみるんだ! とりあえず、あの女に行くぞ!!」
ユウ「はい!」

一人目の女性は、スチュワーデスさんでした。
会話を続けるほど、リオ先生の勢いに、嫌がっている様子が見て取れました。
しかし、リオ先生はお構いなしに、どんどん『濃い』話に持っていきます。
すると、彼女の目が、何度も何度も右下を見るようになりました。
リオ「(なあ、ユウ…。これはもう、頂いたも同然だぜ…?)」
小声でつぶやくリオ先生に、僕は驚きを隠せませんでした。
リオ「(見てな…?) ねえ、今から二人っきりで、いい運動でもしないか?」

ばきっ!!
鈍い音を立てて、彼女の鉄拳が、リオ先生の頬にめり込みました。
リオ「あぐっ!」
倒れこむリオ先生。僕はそれを見て、納得しながら言いました。
ユウ「…殴る感触をイメージしてたんですね…」
リオ「そこまでは分からなかったな…」

いや、分かれよ。
僕はそう思いましたが、やはりその言葉を飲み込みました。

<4> 最後のチャレンジ!

そうこうしているうちに、時間は刻々と過ぎて行きました。
ギラギラした目つきで、相手の目をチェックするリオ先生に、確実に女性は
引いていました。
気付くと、すでに時間はあと5分を切っていました。

リオ「いいか…? 時間的に、これで最後のチャンスだ…。気合入れていくぞ…」
ユウ「はい…」

そして死ぬ気で声をかけた、妙齢の女性。綺麗で、会話の反応も良く、
まさに理想的とも言える女性でした。さらに、会話を続けながら、僕は驚きました。
僕とリオ先生が何を聞いても、その女性は左上を見ながら話すのです。
それは確かに、本当のことを言っているサインでした。
リオ先生が、明らかに興奮しているのが、横からでも分かります。
リオ「(この女さえゲットできれば、マヤに勝てる!)」
先生の目は、そういうオーラを発していました。
リオ「あ、今度良かったら、二人っきりで食事でもどうかな?」
女性「いいですねぇ、ぜひ」
その女性は、静かに右下を向きます。リオ先生の鼻息が荒くなっています。
リオ「一応確認したいんですが…。あなたは俺のことを、殴りたいとは
思ってないよね?」
女性「はあ? そんなわけ、ないじゃないですか」
女性は左上を向きます。確かに本当のことみたいです。
リオ「じゃ、じゃあ…。とりあえず携帯、教えてくれるかい?」
女性「あ、はい」
そして彼女は、左上を向いて思い出しながら、さらさらっと番号を書きました。
女性「じゃ、今日はちょっと用がありますので、失礼しますね」
リオ「ハイハーイ!! じゃまたねー!!」
リオ先生は、大喜びです。
リオ「これでマヤに勝ったぜー!!! 正義は勝つ!!!」

…あまりにもうまく行き過ぎる状況。
根が不幸続きな僕は、どうしても疑わずにはおれません。僕はその番号を見ると、
念のために電話してみました。

リオ「なあ!? 見たか、ユウ!! 何があろうと、俺は…」
狂喜乱舞するリオ先生に、僕は自分の携帯を突き出しました。

「…おかけになった電話は、現在使われておりません」

<5> 勝負の行方は…?

会場から次々と人が帰っていく中、僕とリオ先生は呆然とライトを見つめていました。
リオ「…最後の女…。そういえば左手で文字書いてたな…」
ユウ「はぁ?」
リオ「言い忘れてたが…。『ダイレクト・アイズ』の目の向きは、全部、
『右利き』の人間の話だ。『左利き』の人間になると、全部、左右が逆になる」

先に言えよ。
ユウ「じゃ、じゃあ、左利きか右利きかは、どうやって分かるんですか?」
リオ「さあ」

さあ、じゃねーだろ!!
リオ「そればかりは、聞くしかないな…」
ユウ「…結局、聞くんですか…」
リオ「で、それもウソをついてる可能性があるから、それを判断するのに
目の向きをみて…」
ユウ「ちょっと頭が混乱してきました…」
リオ「でもまあ、人は8割以上が右利きだから、この方法の正解率も8割方って
トコだな…。あとはやっぱり、経験あるのみだ」
ユウ「はい…。もう遅いですけど…」
すると、リオ先生は、ため息をつきながら、こう言いました。
リオ「君は、疫病神だな♪」

笑顔で言うなよ。
僕がそう思っているところに、聞き覚えのある声が聞こえました。
マヤ「ちょっとどこに行くのよ!? せっかくこの私が話しようって言ってるのに!」
ユウ&リオ「……」
マヤ先生は我々に気が付くと、こちらに近寄ってきました。
リオ「どうだった?」
マヤ「…いれぐいよ」

どこがだよ。
僕はそう思いましたが、人間として言ってはいけないことだと感じたので、
口をつぐみました。すると、リオ先生は、こう言いました。
リオ「どこがだよ」

あんた、人間じゃないだろ。
僕は、声に出さないように、そうつぶやきました。

<6> 最後の最後で、恋の告白!?

マヤ「そう…。じゃあ結局、同じじゃない…」
リオ「ああ…。情けない話だぜ…。この会場で、一番いいオトコのこの俺が、
成果ゼロ!? この、サラリーマン早調べクイズの、安住アナみたいな
男さえいなければ、俺の大勝利だったのに…」
マヤ「よく言うわよ…。ねえ、ユウ先生?」
ユウ「(精一杯のモノマネで)おくのかた、じこしょーかいをどーぞ」

その瞬間、場の雰囲気が凍るのが分かりました。
リオ「…結局、引き分けってか…」
すると、マヤ先生は、こうつぶやきました。
マヤ「実はね…。私ちょっと、安心しちゃった…」
リオ&ユウ「え?」
するとマヤ先生は、大きく深呼吸をすると、言いました。
マヤ「私、色んな女に声をかけてるあなたを見て、心が切なくなっていく自分に
気が付いたの…」
リオ「何だって?」
何だって? 僕も同じように、そう思いました。
マヤ「ごめんなさい…。ことあるごとに反抗してきたのは、自分の気持ちの
裏返し…。だから、今、ハッキリ言うわ。リオ…」

まさか。まさか。
そう思う僕に目もくれずに、マヤ先生は、確かに真実の『左上』を見ながら、
こう言いました。

マヤ「私、ずっと前から、あなたのことが好きだったの」

<7> リオの答えは!? そして勝負は!?

リオ先生も、マヤ先生の目の向きを追っています。そしてその言葉が確かに
本当であることを確認すると、言いました。
リオ「そ、そうだったのか…?」
マヤ「ええ…。もちろんよ…」
リオ「マヤ…。実は俺も、そう思ってた…」

おいおいおいおい!!
そう思う僕をよそに、二人の雰囲気は、明らかに高まっていきます。
リオ「俺と釣り合う、最高のオンナは、君くらいなもんだよ、マヤ…」
マヤ「嬉しい…。ねえ、リオの全部を、私にくれる…?」

ぐびっ。
リオ先生が生唾を飲み込む音が、僕の耳にまで響きました。
マヤ「ダメ…?」
ぶるぶるぶるぶるっ!! さながら水にぬれた犬のように、リオ先生は首を左右に
振りました。
リオ「ダメなわけないって! も、もちろんだよ、マヤ…。俺の心も体も、全部
君のものさ…」
マヤ「嬉しい…。本当に嬉しい…」

マジかよ!?
僕は心の中で叫びます。リオ先生は、さらに言葉を続けました。
リオ「俺も嬉しいよ、マヤ…。君のハートも、これからずっと、俺にくれるよな…?」

すると、マヤ先生は、ニッコリと笑って、こう言いました。

マヤ「い・や♪」
リオ&ユウ「へ?」

<8> エピローグ

マヤ「えっとぉ、フォアグラのパイと、プロヴァンス風テリーヌと、キャビアと
ホタテのムース添えを追加ぁ♪」
リオ「い、いいかげんにしろ、マヤ…」

1時間後、我々3人はベイブリッジの近くの高級レストランにいました。
マヤ「何でよ? 何でも食べていいって言ったでしょ? あ、バナナのシャーベットも
追加お願いしまーす♪」
リオ「おいこらぁ!!」
僕の頭に、さっきのマヤ先生のセリフが響きました。

マヤ「これで、今日私がゲットしたオトコは、あなたよね、リオ。
でも、あなたは私をゲットしてない。ほら、あなたさっき言ったよね?
『自分に釣り合う最高のオンナは、マヤしかいない』って。じゃあ、私の勝ちじゃん」
リオ「…って! 君だって、『好きだった』…って」
そこでリオ先生は、ハッと気付きました。
マヤ「そう、過去形ちゃん♪ 昔のお話! でも今は、大ッキライ♪」
リオ「くっそおおおおお!!!」

今、目の前には、大喜びでロブスターを頬張るマヤ先生がいます。
そしてそれを苦悶の表情で見つめる、リオ先生もいます。
マヤ「あ~。やっぱり他人のお金で、美味しいものをお腹いっぱい食べるのって、
人生として最高よねぇ…」

でも、人間として最悪じゃん。
僕はそう思いましたが、口の中が食べ物でいっぱいなので、
言うことができませんでした。

リオ「お前はそれ以前に、人として間違ってるとは思わんのかー!!」
マヤ「どこが?」

たぶん、そこら辺じゃないかな。
僕はそう思いましたが、口の中がワインでいっぱいなので、
やっぱり言うことができませんでした。

マヤ「イカスミとカニも追加―!!」
ユウ「あ、僕にも…」
リオ「お前らぁ!!!」

夜空に、リオ先生の雄叫びが響きました。
僕は、美味しそうに牛肉にかぶりつくマヤ先生を見ながら、この人は当分、
男性には縁が無いな…と感じたのでした。

(完)


ますみさんからいただきました!
ありがとうございます!

セクシーネットへ。