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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。 03/19
~悩みを聞く精神科医。
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これはつい昨日の夕方のことです。
リオ先生が、病院から帰ろうとした僕を呼び止めて、言いました。
リオ「なぁ、ユウ…。ちょっと俺の悩みを聞いてくれないか…?」
リオ先生の悩み。
僕は少しだけ驚きました。
リオ先生に、悩みが存在するとは。
僕が不思議な興味を惹かれながら承諾すると、リオ先生は僕をバーに連れて行きました。
そして10分後。
暗い店内でブラッディマリーを飲み干すと、リオ先生は口を開きました。
リオ「…なぁ、マヤって半年くらい前から、悩み相談室の連載をやってるよな?」
ユウ「……はい」
リオ「マヤへの相談メールはあんなに来てるのに、
どうして俺あての相談メールが一通も来ないんだ!?」
それは、メールアドレスを公開してないからではないでしょうか。
僕はそう思いましたが、とりあえず話を続けていただきました。
リオ「情熱! 愛情! 包容力!
いったい俺に何が足りない!?
何が原因だというんだ!?」
過剰すぎる自信じゃないでしょうか。
僕は改めてリオ先生に言いました。
ユウ「だいたい先生…。悩みに答えるのに必要なのって、相手の立場に立つことだと思うんですけど…。
先生にそれって、できるんですか?」
リオ「できない」
即答ですか。
するとリオ先生は、笑いながら言いました。
リオ「甘いな、ユウ…。確かに共感することは大切だ。でもな、別の励まし方もある」
ユウ「…え?」
リオ「カリスマシンガーの歌を聴いて、気持ちが盛り上がることってあるだろう?
これを『理想との一体化』と言うんだ。最高の生きざまを指し示してやれば、人は自然と励まされるもんさ」
ユウ「……………」
その言葉に、僕は少し感動してしまいました。
すると、リオ先生は言いました。
リオ「おい、このつまみ、あっちの席のより少なくないか!?」
これが、最高の生きざま。
僕は少し頭がクラクラしかけましたが、話を続けました。
ユウ「…それじゃリオ先生…。僕の悩みを解決してくれますか?」
リオ「はっはっは。何でも解決してやるぞ? どんな悩みも一刀両断だ」
僕はその言葉を頼もしく思いながら、相談事を口にしました。
ユウ「僕にどうやったら恋人ができ」
リオ「無理だ」
僕が一刀両断にされました。
リオ「それは、どうやったらカブトムシに光合成ができますか?
と同じレベルの質問だな」
遺伝子レベルで無理ということですか。
リオ「…ただまぁ、不可能を可能にするのが、俺の役目だ。
俺は精神界のブラックジャックを目指しているからな」
っていうより。
ドクター・キリコな気がします。
さぁ、この後にリオの下した恐るべき回答とは!?
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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。 03/21
~悩みを聞く精神科医。2
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(昨日までのあらすじ…
「俺も悩み相談をしてみたい」。そんなワガママを言うリオに、ユウは
「恋人ができない」という自分の永遠の悩みを相談した。
果たしてリオはどう答えるのか!?)
リオ「悩みを整理してもらえるか?」
僕はその言葉に不安を感じながら、自分の悩みを言いました。
ユウ「えっと、まず僕が中学生のときにさかのぼるんですけど…」
リオ「100字以内にまとめてな」
こんな悩み相談、イヤだ。
リオ「…いや、3字以内でもいいな」
『ぼくは』しか言えません。
しばらく悩んだ後、僕は言いました。
ユウ「あの、先生…。やっぱり、少しは共感するのって大事だと思うんですよ…。
何だかさっきから僕、さらに悩みが深まってる気がするので…」
リオ「…そうだな。分かった、共感してやろう」
何かが違う気がしましたが、
僕は悩みを続けました。
ユウ「僕は昔っから告白するたびにフラれ、だからって告白しなくてもフラれるんです。
ある時なんかは、女性に3時間も待ちぼうけにされて、理由を聞いたら、
『家の犬がお腹すかしてたから』って…。
僕は犬以下なんだろうか!?って思いました」
するとリオ先生は、しんみりと言いました。
リオ「犬以下なんだろうなぁ…」
……………。
リオ「今の、共感になってた?」
さげすみになってました。
リオ「いや、でもそういった女の気持ちも分かるな」
そっちに共感するんですね。
リオ先生は、ため息をつきながら言いました。
リオ「まぁ、悩みも尽きないようですが、ここらで…」
二次会の締めみたいなまとめ方、やめてください。
ユウ「……先生…。僕はどうすれば……」
リオ「しかしおかしいだろう、それは?」
ユウ「な、何がですか?」
リオ「身近な女に告白してフラれるのなら、
ナンパすればいいじゃないか」
『パンがなければケーキを食べればいい』
みたいな言い方やめてください。
僕は精神的にボロボロになりながらも、話を続けました。
ユウ「…でも、その自信が沸かないんですよ…」
するとリオ先生は、指を振りながら言いました。
リオ「甘いな…。ユウ」
ユウ「…え?」
リオ「ほら、よく言うだろ? 『鳴かぬなら…」
ユウ「……」
リオ「鳴かぬなら 鳴くよウグイス 平安京」
何と混ざってるんですか。
何だか、自分自身が泣きそうです。
ユウ「…そ、それはどういう意味ですか…?」
リオ「……ある場所でウグイスが鳴かなくても、平安京ではちゃんと鳴いている。
一箇所だけを見て、悲観する必要はないってことさ」
…どことなく強引にまとめられた気がしましたが、僕は納得することにしました。
ユウ「分かりました。くじけず頑張っていれば…」
リオ「そうだ! 頑張っていれば!!」
ユウ「いつかは僕にも彼女ができるんですね!!」
するとリオ先生は、僕の肩をつかんで、にこやかに言いました。
リオ「いや、それはまた別の話」
別なんですか。
その日の11時過ぎ。
僕は大きな精神的疲労感を抱えながら、リオ先生と駅に向かいました。
リオ「やっぱり、悩み相談をしてやると、気持ちがすっきりするなぁ!」
僕はげっそりしました。
そして今日も涙を流しながら、こうして日記を更新するのです。
完