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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。8/29
               医学知識の暗記術
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医師国家試験の合格率は、9割と言われています。
すなわち、一通り勉強すれば、ほとんどの受験生が受かる計算になります。

ちなみに僕の卒業した、ももんが医大の入学時の倍率が5~6倍(すなわち2割)
であることを考えると、それに比べると驚くほど楽勝な試験であると言えます。




その時の僕は、医学部最終学年。

医師国家試験のための模試の結果を見つめていました。


あなたの順位は   ももんが医大 受験者数 95人中





95位





まさに、ビリ・オブ・ビリです。


「その順位は、マズいんじゃない?」
悪友の一人が、笑いながら言いました。
「やっぱり、日ごろから勉強してないとな、俺みたいに」

僕は悔しくてたまりませんでした。

「じゃ、お前は何位なんだよ」

すると彼は、勝ち誇ったように言いました。



94位







うわあ、ブービー賞。


その友人は、言葉を続けます。

「受験者の下から1割は落ちるんだぞ? それじゃ、
必ずお前は落ちる計算になるよな





お前もな。


僕は心の底から、そう叫びたくてたまりませんでした。

何にしても、少なくとも自分よりは下だと思っていた友人にも負けたショックで、
僕はすぐに勉強に取り掛かることにしました。



国家試験まであと1ヶ月。
僕は、とりあえず教科書を開きます。

「仮性球麻痺」
「亜急性甲状腺炎」
「自己免疫性溶血性貧血」
「クラインフェルター症候群」




ねえ、何語?

全く理解できない言葉が並ぶのを見て、僕は絶望を感じました。



しかし何よりもショックだったのは、



『アミトロは、トロトロ進むんだよ♪』



初心者向けのゴロ合わせギャグすら、まったく理解できないことでした。




途方に暮れた僕は、



とりあえず胃の構造
から勉強することにしました。


僕は、人体解剖学の教科書を開きます。

胃には、網のような構造物がついています。
下部についているのを、大網(だいもう)。
上部についているのを、小網(しょうもう)と言います。


僕はそこまで読むと、とりあえず教科書を閉じて、思い出すように書き出してみました。




大綱  小綱








なんだか、微妙に違う気がしました。



しかしここで、一つの壁にブチ当たりました。

大網が下で、小網が上だというのを、どのように覚えればいいのでしょう。



僕は20分ほど悩んだ挙句、他のものに例えて覚えることにしました。



今から言うことを聞いて、ひかないで下さいね。




必死の受験生が考えたことですから。

いいですか?















『大きいバストは下に垂れ下がり、小さいと上を向く』










発想が小学生以下だと思いましたが、贅沢は言っていられません。



それに、自分にとって心地いい知識は、記憶に残りやすいと言います。




バスト以上に心地いい知識が、その時の僕には思いつきませんでした。


僕は大急ぎで、次のページに進みました。




胃の上部入り口を噴門(ふんもん)。
下部の出口を幽門(ゆうもん)と言います。






どうして、医学用語はこんなにフクザツなのでしょうか。
僕は、必死に頭を回しました。

上から、噴門・幽門。
すなわち、『ふん』→『ゆう』の順番。


HUN(ふん)とYU(ゆう)で、続けて書くとHUNYU


読みかえると、

ふにゅうです。


そう、







やわらかいバストの感触と同じです。




自分にとって、幸せな知識は、記憶に残りやすいとも言います。







これ以上に幸せな知識が、この世に存在するのでしょうか。




ここまで考えて、僕は一つのことに気づきました。








全部、バスト関連。



でも、愕然としている時間はありません。

僕は涙を流しながらも、様々な知識を覚えていきました。







数ヶ月後。

国家試験会場の発表現場。





「受かったのは、何のおかげだと思いますか?」


テレビの取材に対し、
全部で1000個以上のバストつながりの知識
を持つ男は、笑顔で言いました。











「情熱です」


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