□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
精神科医ユウの日記
モーニング女医。 5/25
                        ~道草する病理の女医。1
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



つい先日の出来事です。僕は帰りの電車内で、あの女医さんと一緒になりました。



あ、ユウくんだー♪





こんなしゃべり方をする女医さんは一人しかいません。


病理のドクター、アスカさんです。



ユウ「………あ、こんにちは…」

アスカ「偶然だねぇ。ユウくん、こっちなの?」

ユウ「あ、はい…」



アスカ「へえー!! 実は私もね、こっちなんだよぉ♪





















分かります。今こうして、












同じ電車に乗っているわけですから。





ユウ「そうだったんですか…」

アスカ「うん!!!」


マヤ先生をして、突っ込み役に回させるほどのアスカ先生。

僕は、彼女との対話に耐え切る自信がありませんでした。
そのため、適当な理由をつけて、逃げることにしました。

ユウ「あ、ちょっと僕、今日は渋谷で降りなきゃいけませんので…」



アスカ「え!? 偶然だねぇ、私もなのー!!























パードン?







アスカ「私、ちょっと買い物するのー! ねぇねぇ、良かったら一緒に付き合わない?」





















まさに、ボーイズビーもビックリの展開でした。





















唯一ボーイズビーと違う点は、





















相手がアスカさんであるということだけです。












ユウ「…い、いいですよ…」


アスカ「今、露骨にイヤそうな顔をしなかった?」


















ぎく。












アスカ「なぁんてね。イヤなわけないよね~♪

























カンは鋭いけど、鈍い人ですね。




さあ、急遽決定したアスカ先生とのデート!?

ユウの運命は!?

決して報われることのないユウに、唯一報われるメール、お待ちしております。


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
精神科医ユウの日記
モーニング女医。 5/27
                        ~道草する病理の女医。2
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



『天然ボケ』女医、病理のアスカさん。


僕は、アスカさんと一緒に渋谷で食事をしているという幸運が、信じられませんでした。



あまりの嬉しさに、死んでもいいと思いました。







アスカ「ねーねー、血管さわってイイ?























っていうか、今すぐ死にたいです。





ユウ「な、何で血管なんですか…?」



アスカ「私ねぇ、血管フェチなのぉ♪」

















今までに聞いたフェチの中で、
まさに最強の部類に入りました。






アスカ「採血するたびに思うんだけどね、あの
やわらかい感触がたまらないの♪

























女医さんが言うと、シャレになりません。




アスカ「本当に血管って、いいんだよ♪
あの、プクプクしてぽにょぽにょしてピュルルルー!って所が


























最後の音、出血してませんか。



アスカ「ねえ、いい血管と悪い血管って知ってる?」


















知りませんし、知りたくもありません。


僕はそう言いたくなりましたが、

でも、さすがにそれはアスカさんに失礼なので、マジメに話にのることにしました。



アスカ「いい血管はね、腕をしばらなくても分かるくらい、ぷくっとした血管」



ユウ「うわあ、そいつはいいや










するとアスカさんは、大喜びで言いました。



アスカ「でしょでしょ?

















神様、この人には、

皮肉が通じません。



アスカ「でね、悪い血管は、腕をしばってもほとんど見えない血管! 脂肪の厚い人って、見えないのよ~!!」



なんともコメントのしようがない話を、僕は何とか広げようとしました。



ユウ「じゃあ、KONISHIKIなんか、最悪の血管ですね」




アスカ「うわぁ、安直な論理展開

























神様、この人は、


実は皮肉に気づいて、
さらに根に持ってるみたいです。







アスカ「まぁ、血管の良さは、話しても分からないだろうけどぉ


















じゃ、この話、やめませんか。





アスカ「ユウくんのは、イイ血管だよぉ。ね?」


ユウ「光栄です…」




僕は精神的にかなり参ってしまったので、帰ることを決意しました。



ユウ「あの、アスカ先生? 僕、明日が早…」




アスカ「だから触らせてね?」

ユウ「え?」


アスカ「ほら、ぷにぷにぷにぷに






















……………

















もうちょっとだけ、いてもいいかな。



そんな時、アスカさんから意外な一言が発されました。


アスカ「ねえ、ユウくん」

ユウ「は、はい?」


アスカ「ちょっと、いいトコ行かない?」











え。




待て、明日!!

性懲りもなく、メールをお待ちしております。


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
精神科医ユウの日記
モーニング女医。 5/28
                        ~道草する病理の女医。3
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



あら、こちらのユウさんって、精神科のドクターさん? いいオトコねぇ…。キスしちゃおうかなぁ♪

いや~ん! アリスちゃんが先なの~!! ん~♪

ダメー!! この人は私のモノなんだからー! ちゅっちゅっ!!













…これは夢なんでしょうか?




僕は、その状況を信じることができませんでした。















この僕が…


















オカマさんたちにキスされるなんて。





これは夢なんでしょうか?










っていうか、


夢であって下さい。(哀願)





アスカ「キャー!! みんなメッチャ大胆ー!!」

アスカ先生は、隣で大喜びをしています。
僕は、魂をしぼりだすように、聞きました。

ユウ「アスカ先生…。よくこちらに来るんですか?」

オカマさん「そうなのよぉ」

























あなたには、聞いてません。





アスカ先生は、テキーラサンライズを飲み干すと、こう言いました。


アスカ「うん…。時々、ストレスがたまるとね…」

















アスカ先生にも、ストレスがたまるんですね。



僕はそう思いましたが、それは失礼だと感じたので、言うのをやめました。


ユウ「そうなんですか…。確かに、僕もストレスがたまることって、ありますよ」




アスカ「またまたー!! あははははははははははははは!!



アスカ先生は、ひとしきり笑った後に、こう言いました。






アスカ「ほんっとユウくんって、冗談うまいよねぇ




























冗談じゃないんですけど。




アスカ「ありがと! ちょっとだけ落ち込みがなくなったよ



























こっちはかなり落ち込みました。







僕は、前々から聞きたかったことを、アスカさんに聞いてみることにしました。


ユウ「ドクターをやってて、良かったことって何なんですか?」





アスカ「うーん…白衣着れることかな?」」


























理科の先生でも、着れますよ。






アスカ「私、白衣フェチなのね」





















血管にせよ、フェチが目白押しですね。




頭がクラクラになる僕。

しかしさらに会話は続きます。

そして僕も、まさかその後に、あんな危険な話になるとは思いませんでした。

明日に続く!!


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。 5/29
                        ~道草する病理の女医。4
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


アスカ「ラムコークおかわりー!!

池袋にある、ゲイバーの中。
アスカ先生は、ハイピッチでお酒を飲み干していました。


その顔には、相変わらず憂いの表情を浮かべています。


ユウ「アスカ先生…」

アスカ「ふふ…。ねえ、ユウくん、私のツラい話、聞いてくれる?」

ユウ「はい…」

アスカ「私ね、今日、医療ミスしちゃった




僕は、その言葉に驚きました。


ユウ「ど…。どんなミスですか?」



アスカ「患者さんの名前を呼ぶときにね、『ふくべ』さーん! って呼んだのに、誰も返事しないの」



ふくべ?





アスカ「そうしたら実は、『服部』って書いて、『はっとり』って読むのね


























そのミスは、医療以前の問題だから。




アスカ「珍しい名前だよね~♪」






















先生の頭ほど、珍しくないと思います。



アスカさんは、再びグラスを片手に持つと、唇に当てました。



アスカ「ね、大変でしょう?




















いや、それで終わりですか?






アスカ「人生って、難しいよね…




















その人生は、普通よりかなり簡単な部類に入ると思います。






アスカ「私、なんか今日は疲れちゃったぁ」


僕は考えました。


どんな下らない理由であっても、本人が悩んでいるということが重要だ。



僕は、一人の人間として、アスカさんを癒したいと思いました。





ユウ「大丈夫ですよ。ツラい人生を送っている人ほど、輝くことができるんです」


アスカ「……。ユウくんは、マヤちゃんにイジメられて、ツラい毎日を送ってるよね?」

ユウ「は、はい…」


アスカさんは、僕の姿を上から下まで見て、言いました。






アスカ「輝いてるって、どのへんが?























どのへんだろう。







アスカ「踏まれ損じゃない?























反論できません。




アスカ「まあ、生きてりゃいいことあるよ」



ユウ「…………」
























って、逆に励まされてどうする。




アスカ「たぶんね
















それも、『たぶん』ですね。





一人の人間として癒す以前に、




まず僕の、








一人の人間としての人権を認めてください。






アスカ「ふふ…。でもユウくん、やさしいね…。ユウくん見てたら、元気が出ちゃった。
下には下がいるなって























僕より下は、ミトコンドリアくらいかな。




するとアスカさんは、ドキッとするような笑顔をしました。



アスカ「ふふふ…。私、なんだかユウくんと同じところで働きたくなっちゃったなぁ…」















え。




それって、もしかして。






アスカ「ユウくん、病理に来なよ



















それは逆だろ。






アスカ「病理はいいよ~♪ 精神科より、お給料だって多いし」

ユウ「いや、お金っていうより…」

アスカ「出世だって早いよ」

ユウ「いや、出世っていうより…」



アスカ「精神科でマヤちゃんにイジメられてるより、よっぽど幸せだと思うよ」



ユウ「行こうかな



するとアスカ先生は、にこやかに言いました。




アスカ「病理で私にイジメられてる方が



















動作の主語は違っても、
動詞は一緒なんですね。




アスカ「マヤちゃんはハードだけど、私はソフトよ?」

















アダルトな言葉にごまかされそうですが、






ガンガンと殴られるようにイジメられるか、

ジワジワと真綿で首をしめられるようにイジメられるの違いですよね。




アスカ「どう?」

ユウ「やめときます…」

僕は、静かにそう答えました。


アスカ「そっかぁ…。残念…」



そう。僕は今の場所が気に入ってるんだ。

そう思った時に、僕の携帯が鳴りました。



ユウ「はい?」


マヤ「あ、ユウ先生!? 明日のレポートのフロッピー、
水に濡らしちゃったから、すぐに打ち直しておいて!





















うわあ、ハードだなぁ。




目の前を見ると、アスカ先生がニコッと笑っていました。


僕は、その晩に何度も、人生について考えたのでした。



支岐さんからいただきました。ありがとうございますー!

日記トップへ。