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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。12/25
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。
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昨日は、クリスマスイブでした。

みなさんの予想を大きく裏切って、




何の予定もなかった僕は、今年一年頑張った自分へのご褒美として、
自分で自分にプレゼントを買うことにしました。


「おめでとう、ぼく」
「うわぁ、ありがとう、ぼく」

こんな一人二役も、すでに自己嫌悪を通り越してすがすがしい域にまで達しています。



今年のプレゼントは、「ピクミン」のソフトです。


僕はピクミンの歌が大好きです。

引っこ抜かれて戦って食べられて~











どうしても他人とは思えません。


さて、買いに向かう場所ですが、当然のごとく、新宿や池袋は避けます。
カップルの波に飲まれ、精神崩壊に陥る危険性があるからです。

その点、秋葉原なら大丈夫です。
ウォークマンを買いに来た外国の方や、大きな紙袋を抱えた日本人男性の方しかいないからです。

僕は意気揚揚と向かい、その1時間後には、ついにピクミンを手に入れて、
ウキウキしながら家に向かっていました。

あとはこれをセットして、テレビの前に座ればOKです。


そのとき、ふっと考えが浮かびました。
マヤ先生は、今何をしているんでしょうか。

「500人の男たちと分刻みでデート!」と言っていましたが、あれは本当なんでしょうか。

案外、自分の家で一人でタマネギを刻んでるだけのような気がしました。

そんなときです。
僕の携帯が、ジングルベルの着信音を鳴らしました。

僕は大慌てで出ます。


ユウ「は、はいっ!」


すると、聞き覚えのある声が響きました。

マヤ「ユウ先生? 今ヒマ!?

明らかにマヤ先生です。

ユウ「い、いえ、ヒマでは…」

そこまで言いかけて、僕は考えました。

死んでも、「ピクミンやらなきゃいけませんから」とは言えません。
どう答えようか悩んでいるうちに、マヤ先生は言いました。

マヤ「じゃ、来てね!



忘れていました。




どう答えようが関係ないことを。

ユウ「あ、あの…」

マヤ「良かったら、今すぐに私の家に来て! 一緒に過ごそうよ!




え。




ユウ「そ、それって…」


それってもしかして。


ユウ「い、いけませんマヤ先生! 僕はそんなつもりで…」

マヤ「何言ってるのぉ…。聖夜に男女が二人で過ごすっていったら、
   コレしかないでしょう?」

ユウ「あぁ…。ダメです先生、ダメ…」








それは、ピクミン手に持ちながらする妄想じゃないだろう、ユウ。



自分で無理に抑圧しようとしていただけで、やはり気持ちは
クリスマスのために暴走直前
だったことに気が付きました。


マヤ「じゃ、なるべく早く来てね!」

僕はマヤ先生の声に、現実に引き戻されます。

ユウ「はい!」

マヤ「あと、何か自分の大事なもの、必ず持ってきてね!」

ユウ「は、はい!」

マヤ「じゃねー、待ってるねー!!」

チーン。
電話は静かな音を立てて切れました。


…大事なもの…?

何のことだろう…?

僕は、ふっと思い出すと、手に持っているピクミンを見つめました。


…これでいいのかな…?


僕は訳が分からないながらも、とりあえず大急ぎでマヤ先生の家に向かいました。


…それが、あんな恐ろしいクリスマスイブの幕開けになるとも知らずに…。



さぁユウの運命は!?
そこに待つのは幸せか、それとも……?

待て次号!


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。12/31
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。2
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(昨日までのあらすじ…
クリスマスイブに、突然にマヤに呼び出されたユウ。
「大事な何かを持ってくること」という条件を不思議に思うが、とりあえずユウはピクミンのソフトを手に、
大喜びでマヤの家に向かう!)


マヤ「ああっ…。ユウ先生…待ってたの…。もう待ちきれなくって…」

ユウ「待たせたね、マヤ。僕が君のサンタクロースだよ」

マヤ「あぁっ! 私のくつ下にあなたをちょうだいー!」






………。



その妄想、何回目だ、ユウ。


僕はマヤ先生の家までの道のりで、何度も同じ妄想を反芻しつづけていました。

そう。
今から考えれば、そのときが一番幸せだったかもしれません。
マヤ先生の家に入る、その妄想のときこそが…。



リオ「おう、来たかユウー!

アスカ「待ってたよー!

ドアを開けた瞬間に響いた二人の声。
僕は事態がほとんど把握できませんでした。

アスカ「ほら、固まってないで中に入りなよ」

僕はアスカ先生に手を引かれて、強引に中に入れられます。

マヤ「あ、やっと来たんだ、ユウ先生」

まわりを見回すと、明らかにパーティの途中でした。

ユウ「マ、マヤ先生…。これは…」

マヤ「へ? 見てのとおり、みんなでクリスマスパーティ」



……………。

僕はあまりの衝撃に、つい言いました。

ユウ「き、聞いてませんよ!

マヤ「聞いてないのが悪い!




いや、だから言ってないでしょう。

僕の心の突っ込みも虚しく、先生たちは大喜びで飲んでいます。

リオ「そっれっでっはぁ、とりあえず全員集合したので、
本日のメインイベントを開始しましょう!」

マヤ・アスカ「オー!!」

ユウ「な、何をするんですか?」

マヤ「ふふふふ…。プレゼント交換♪


心の底から、聞いてません。

僕はその瞬間、一つのことに気がつきました。

…まさか、僕の大事なピクミンを、交換されてしまう…?

ユウ「ちょ、ちょっとそれは…」

マヤ「あれ、ユウ先生、私たちのプレゼントじゃイヤ?

ユウ「………え?」

そのとき、僕は恐らく今年で一番のカロリーを使って思考しました。

…ピクミンは、もう一度買うことは出来る。

でも、リオ先生はともかく、
アスカ先生やマヤ先生のプレゼントだったら、もらってみたい…。


マヤ「どうするの?」

…そうだ…。

考えられる「最高の結果」は何だ、ユウ?

それこそ、「マヤ先生の手編みのマフ


あぁ、口にするのも不可能なほどの究極の一品。

可能性は、もちろん限りなく0に近いが、完全にあり得ないこともないかもしれない。

それじゃ逆に、考えられる「最悪の結果」は何だ?


………。

去年の男同士のプレゼント交換で回ってきた、









        ツナ缶








………。






あり得ない。

そこまで考えると、僕は言いました。

ユウ「分かりました。やりましょう」

マヤ「OK!!」

リオ「じゃあ早速始めようか!」

ユウ「…あは…」

アスカ「ん? どうしたの、ユウ先生?」

その言葉に、僕は笑いながら言いました。

ユウ「実は、僕去年イヤな思い出があるんですよ。プレゼント交換に」

マヤ「っていうと?」

ユウ「男友達と数人で集まってプレゼント交換したら、僕に回ってきたのは
ツナ缶だったんですよ。泣けてくると思いません?」

全員「……………





何ですか、この沈黙は。


ユウ「あの…」

リオ「……あ、あははっ! ひどいよな、ツナ缶なんて!」

マヤ「そ、そうよねぇ!」

アスカ「…………うふ、うふふふふ………」

全員「あ、あははははー!」




………。




この中に、
絶対にツナ缶の人がいる。


僕は心の中でそう直感しました。
しかし当然ですが、この状況でキャンセルは効きません。

さぁ、ユウに回ってくるのはいったいどんなプレゼントか!?

大切なピクミンを犠牲にして得るものは、果たして幸せか?

それとも、悪夢のツナ缶か。

待て、次号!


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。01/15
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。3
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(昨日までのあらすじ…
突然のクリスマスパーティでの「プレゼント交換」。
果たしてユウが大切なピクミンを犠牲にして得るのは、ツナ缶か、それとも…)

マヤ「じゃあ、全員のプレゼントを、この袋の中に入れてねー!」
マヤ先生は、そう言いながら袋を出しました。

リオ「おう!」
アスカ「はーい!」

僕は目を皿のようにして、二人の出すプレゼントを見ました。

リオ先生が出したのは、包み紙に包まれた、
高さ5センチ、直径10センチほどの、円筒形のものでした。











さっそく、ツナ缶っぽいんですけど。


リオ先生はニヤニヤしながら、その包みを袋に入れました。


次にアスカさんが出したのは、とっても大きな包みでした。
高さ10センチ、タテヨコ30センチずつの箱の形をしています。



うわぁ、大きいなぁ。
これだったらツナ缶であるはずがありま









ツナ缶詰め合わせだったら
どうしよう。


僕は、言葉に出来ないほどの不安を抱えていました。


最後にマヤ先生が出したのは、ふわふわした円盤状の包みでした。

セーターでしょうか。マフラーでしょうか。
何にせよ、あの曲面は、衣類のような柔らかなものであることは間違いありません。


…いや、待てユウ。








新聞紙で包んだツナ缶だったらどうするんだ。



…………。



何を見てもツナ缶に見えます。


この症状は、ツナ缶被害妄想とでも名付ければいいのでしょうか。



マヤ「はい、ユウ先生もプレゼントを入れてね♪」
マヤ先生の微笑が、悪魔の笑顔のように見えました。
今に限ったことではありませんが。


僕は、恐る恐る聞きました。

ユウ「ど、どうやってプレゼントを選ぶんですか?」

マヤ「決まってるじゃない。私たちは医者よ?」
リオ「その通りだ」

固唾を飲む僕に、マヤ先生は笑いながら言いました。

マヤ「ジャンケンよ








医者、関係ないじゃん。


マヤ「いい? ジャンケンで勝った人から順番に選べるのよ?」

ユウ「ええ!?」

僕は考えました。


………待てよ。
ジャンケンだったら、まだ運の要素がたくさんある。
さすがのマヤ先生やリオ先生だって、勝とうと思っても勝てるもんじゃないだろう。

それに、僕だって得意なことはある。

僕は昔から、「ジャンケンユウちゃん」と呼ばれていたんだ。





……………。








今、何かすっごく寂しい感じがしましたけど、
多分気のせいですよね。


さぁ、果たしてユウは勝てるのか!?
緊迫の次号をお待ちください!


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。01/22
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。4
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(昨日までのあらすじ…
突然のクリスマスパーティでの「プレゼント交換」。
果たしてユウが大切なピクミンを犠牲にして得るのは、ツナ缶か、それとも…)

マヤ「いい? ジャンケンで勝った人から、順番に選べるんだからね?」
ユウ「わ、分かりました…」

高まる緊張。僕は唾を飲み込みました。

アスカ「わーい、ジャンケンー!」
リオ「正々堂々勝負しようぜ!」

マヤ「…いくわよ…!」
アスカ「よーっし!」
マヤ「ジャーン、ケ…」

その瞬間です。
その部屋の中に、小さな声が響きました。

リオ「オレ、チョキ出そうかなぁ…









全員の時が止まりました。


どこが正々堂々なんですか、リオ先生。


僕は心の中で激しく叫びます。

こんな心理戦仕掛けたって、
何の意味もない
のではないでしょうか。

僕がそう思った瞬間、ある声が聞こえました。

マヤ「私がグー出すと見越してパー出すだろうからその裏でチョキを出してでも実はそれは罠でグーを出されるかもしれないから私は



先生、お約束すぎます。


これじゃリオ先生の思うツボではないでしょうか。
僕はそう思いながら、リオ先生の方を見ました。


リオ「マヤはグー出すから俺はパーを出すけどそれに裏をかいてチョキを出すかもしれないから俺はグーを出そうかでもマヤは



あんたもかい。



なんだか僕たちは、


世界一ムダな時間を過ごしている気がしました。


マヤ「い、行くわよ!?」

その言葉に、僕はハッとしました。

じ、自分はどうするんだユウ!?

…そうだ。ジャンケンで心理戦を挑まれたときの黄金法則は、

『バカになること』

何も考えない人間が一番強いんだ!

マヤ「じゃーん、けーん…」

でもでも、こんなときにバカになりきれる人がいるのでしょうか!?
僕は混乱しそうな頭を抱えながら、必死に手を出しました。

マヤ「ぽん!!」
アスカ「ぽん!!」
リオ「ぽん!!」
ユウ「ぽん!!」








マヤ先生はチョキ。
リオ先生もチョキ。

そして僕もチョキ。

アスカさんは




グーでした。




アスカ「やったー!!」
僕たちは呆然とします。
マヤ「う、うそ…」
先生も驚きを隠せません。
するとアスカさんは笑いながら言いました。

アスカ「だって、リオ先生が出す手を教えてくれるんだもん-!








隊長。




バカになりきれる人がいました。



動けない僕たちを尻目に、アスカ先生は大喜びで袋の中に手を入れます。

アスカ「わったっしは、ねぇ…。やっぱり一番小さいのがイイ!」


…待ってください。
一番小さいのと言ったら…。


アスカ「これー!!

その瞬間、アスカさんは袋から手を出しました。


手には、僕のピクミンが握られていました。









うそだっちゃ、ダーリン?


アスカさんは、すさまじい勢いで包みを解きます。
そして中身を見ると、目を輝かせました。

アスカ「あー!! ピクミンだー!! これって、あの歌のやつでしょー?
私、大好きなのー!!


その言葉を聞いて、僕は少し気分が落ち着きました。

…そうだ…。あのゲームも、どうせ僕の手を離れていくんだったら、アスカさんみたいに喜んでもらった方がいい…。

僕がそう考えたときです。


アスカ「ねぇねぇ、さっそく今聞いていい?




………。











WHAT?



アスカ「ねぇマヤちゃん、オーディオどこ?


……。






もしかして、


CDと勘違いされていませんか。

僕の額に、少しずつ汗が流れ落ちてきました。


アスカ「………あれ、入らないよ?」

マヤ「あら、ホント」



当然です。


リオ「不良品じゃないのか?





不良なのは品物じゃなくて、


人間ではないかと。


アスカ「あー!! ダメじゃなーい!! もうイヤー!!」

マヤ「…ほらアスカ、そんなに怒らないで。プレゼントも物なんだから、こういうこともあるわよ」

リオ「そうだな。せっかくのクリスマスにそんなこと言ったら、バチが当たるぞ」



ていうか、当たってください。


アスカ「そうね…。プラス思考で行こう…! うん!
部屋の飾りくらいになら、使えるもんね!!








あなたのプラス思考が、

僕には限りなくマイナスになっています。



その時、僕の頭にピクミンの歌が響きました。








引っこ抜かれて~。
たたかって~。
食べられて~。

今日も~
はこぶ~
たたかう~
ふえる~

そして~









そして…







きみはいま、星になったよ。
ピクミン。






僕は静かに、そうつぶやいたのでした。


マヤ「さぁ続けて行くわよー!」
リオ「おおー!」


さぁ、すでに帰る場所(=ピクミン)はない!
いったいユウの手にするものは?


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。02/17
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。5
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(昨日までのあらすじ…
突然のクリスマスパーティでの「プレゼント交換」。
ユウ・マヤ・リオ・アスカの4人がジャンケンを行い、アスカが勝ち、
ユウのピクミンを奪い去った。さぁ、残るプレゼントは3つ。
果たしてユウが大切なピクミンを犠牲にして得るのは、幸せか、ツナ缶か!?)

マヤ「じゃあ、行くわよ…?」
リオ「おう…」

残ったプレゼントは3つ。
アスカさんの大き目の箱。
リオ先生の円筒形のもの。
そしてマヤ先生の柔らかそうな包みです。

マヤ「じゃんっけん……」
リオ「ちょっと待ったぁ!!




またですか。

リオ「今度のジャンケンは、連続ジャンケンで行かないか?」

マヤ「連続ジャンケン?」
リオ「あぁ。何回もジャンケンをやって、勝った回数が5回になった人が優勝だ」
マヤ「…え?」
ユウ「どういうことですか?」
リオ「たとえばグー・グー・パーだったら、パーの人が一勝」
マヤ「……」
リオ「パー・チョキ・チョキだったら、チョキの2人が一勝ずつ」
マヤ「でもそれ、ややこしくない?」
リオ「そこでだ。右手でジャンケン、左手で自分の勝ち数を数えておくんだよ」
マヤ「へぇ……」

リオ「いいよな、マヤ?



明らかに何かあるような
気がするんですけど。



そう思っていると、マヤ先生が言いました。
マヤ「面白そうね……




ぼく、面白さ望んでません。

リオ「じゃあ行くぜ!




僕には聞かないんですね。


リオ「じゃんっけん…」
マヤ「………」
ユウ「………」

全員「ぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっぽんっ!!!!」


凄まじい勢いで手が出されていきます。
僕は左手で勝ち負けを数えるので必死でした。

すると、僕の出している手を見て、リオ先生がニヤニヤと微笑んでいるのが分かりました。

……え?

しかし、です。
その後、リオ先生の顔は、少しずつゆがんできました。

全員「ぽんっ!!



…勝負がつきました。
勝ったのは、マヤ先生でした。

マヤ「やったー!!!!!
リオ「ちくっしょおおおおお!!」

最終的な勝ち数は、マヤ先生が5、リオ先生が4、僕は1回しか勝てていませんでした。
僕には、何が起こったのかまったく見当がつきません。


1つだけ分かっていたことは、






また騙されたっぽいことだけです。


リオ「分かってたのかよ、マヤ!?」
マヤ「まぁねぇ……」
ユウ「な、何がですか?」

マヤ「あのね、ユウ先生…? このジャンケンって、結構複雑でしょう?」
ユウ「えぇ…。自分で勝ち数を数えるのも大変で……」
マヤ「うんうん。そうすると、右手はどうなると思う?」
ユウ「……………え?」
マヤ「左手に夢中になって、右手は……」
リオ「……グーチョキパー、グーチョキパー、グーチョキパー…になるんだよ」
ユウ「………そういえば…」
マヤ「で、あとはそれに勝つように手を繰り返せばいいだけ」
ユウ「………」
マヤ「それがリオの狙い。で、私はそれに便乗して手を出してたわけ。
私に気づかれたと思ったリオは、気が動転して違う手を出しちゃって、負けたのよね」
リオ「くそお!!」
マヤ「惜しかったわね、リオ


僕は惜しくもなかったんですよね。


マヤ「じゃあ、私も選ばせてもらおうかなぁ……」

そう言いながら、マヤ先生は袋に手を入れました。
マヤ「こういう時は、小さいものに福があるってね……。コレー!!」

取り出したのは、円筒形の箱。

マヤ「え? これってリオの!?」
そう言いながら包みをほどいていきます。
マヤ「キレイね…。何かしら……? まさか宝石?」
先生は嬉しそうに箱を開きます。

中から現れたのは……。

ヒモ。

いえ、ヒモのような下着でした。


マヤ「…………………。これ、なぁに、リオちゃん?」

先生の声はにこやかですが、目は鬼のようです。

リオ「君がもらってくれると思ってたよ、マヤ……」
リオ先生はうっとりとした顔でマヤ先生を見つめています。
マヤ先生の形相が少しずつ悪魔のように変わってきます。

するとアスカさんが言いました。
アスカ「え、いいじゃない、マヤちゃん! 痴女みたいでカッコいいよ!!

火にアブラ注いでませんか、アスカさん。


マヤ「うふふふふふ。そお…?」
リオ「メリークリスマスって感じだろう?


いえ、あまりにきわどすぎて、




メリーに首ったけ、って感じです。


そして数分後。


リオ先生は腫れた頬を氷で冷やしながら、僕の方に言いました。

リオ「さぁ、最後の勝負と行こうか、ユウ」
ユウ「はい……」
リオ「正々堂々勝負しような



それ、そっくりそのまま返します。


リオ「ご婦人たちのプレゼントを二人で奪い合うことになるなんて皮肉だな」
ユウ「そうですね……」
リオ「はやく取らないと、プレゼントが待ちくたびれちゃうからな……」
ユウ「そうですね、腐っちゃうかもしれませんしね…」
リオ「あはははは!」

するとその瞬間、アスカさんがこんな言葉を言いました。



アスカ「私の、缶詰だから、腐らないよ























二人の時間が、凍りつきました。



リオ「………」
ユウ「………………」


その時、マヤ先生が言いました。

マヤ「……アスカが言っちゃったから私も言うけど、私のは、月並みだけど手編みのマフラー


リオ「……………………………」
ユウ「……………………………………………」










リオ「なぁ、連続ジャンケンで

ユウ「イヤです



さぁ、果たして最後の勝負の行方は!?
ユウに微笑むのは、女神か、缶詰か!?


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。02/27
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。6
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(昨日までのあらすじ…
突然のクリスマスパーティでの「プレゼント交換」。
ユウのプレゼントはアスカに。リオのプレゼントはマヤに。
残されたプレゼントは、マヤの手編みのマフラーと、アスカの缶詰
果たしてユウが大切なピクミンを犠牲にして得るのは、いったいどっち!?)

リオ「ユウ…。俺はこのジャンケンに、すべてを賭けてもいいと思ってる」
ユウ「偶然ですね…。僕もです…

リオ「俺はな、もしこのジャンケンに勝つことができるのなら…。
   釈由美子とキスしたって構わない!








いいことづくめじゃないですか。


僕がそう思った瞬間、リオ先生は、信じられない言葉を言いました。


リオ「いいか、ユウ? このジャンケンで、俺は、イカサマをする

ユウ「………はぁ?」

リオ「イカサマをするんだよ








何を自信満々に言ってるんですか。

ユウ「そ、それはさすがに卑怯でしょう…」

リオ「何を言ってるんだ! 有名なセリフがあるだろう。
イカサマは、知られなければイカサマじゃない













いや、今知っちゃったんですけど。




さぁ、リオの意図とはいったい何なのか!?


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。02/28
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。7
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(昨日までのあらすじ…
突然のクリスマスパーティでの「プレゼント交換」。
残されたプレゼントは、マヤの手編みのマフラーと、アスカの缶詰
ユウとリオの最後のジャンケンの直前、リオは突然に言った。
「俺はイカサマをする」。 さぁ、リオのイカサマとは何なのか?)

リオ「俺の究極のイカサマに、勝てるか?」

あまりに自信満々にイカサマ宣言をしたリオ先生に、僕は言いました。

ユウ「あとだしはナシですよ?」

リオ「もちろんだ」

ユウ「グーにもチョキにもパーにも見える、インチキな出し方はダメですよ?」

リオ「当たり前だ」

ユウ「それから、それから…」

するとリオ先生は、にこやかに言いました。

リオ「もういいのか? 始めるぞ?




あぁ。やっぱり僕は、
悪だくみではこの人たち
(リオ+マヤ)にはかないません。


恐らくリオ先生は、
僕の想像もつかないほど恐ろしいイカサマをするに違いありません。

そんなとき、リオ先生は叫びました。

リオ「じゃんっけんっ!!
















あまりに突然に発される声。
僕はすぐに手を出そうとしました。



しかし!



「まだ、『ポン』が言われていない」。


その一瞬の判断で、僕は完全に手を出すのをやめたのです。

僕は、リオ先生の「ポン」を待ちながら、静かにリオ先生の顔を見ました。

その時のリオ先生の顔は。


まさにこの世が終わったかのような、悲惨な表情をしていました。


















…………………。






まさか。






これがその、究極のイカサマだったのですか。



「じゃんけん!」で相手に驚かせて手を出させて、後から悠々と「ポン」を言って手を出す。
確かに、あとだしでもないし、インチキでもありません。


でも、なんだか。




色々な意味で、勝った気がしました。



するとリオ先生は、引きつった笑いで言いました。


リオ「やるな…









やりません。



リオ「それでこそ、俺のライバルだ」







同レベル扱いですか。



リオ「ここから先は、恐らく運だけになるな…」
ユウ「………はい……」
リオ「行くぞ………」

ユウ「………」





リオ「ポンッ!!」   ユウ「ポンッ!!






















勝負の行方は!? 


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。03/01
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。8
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(昨日までのあらすじ…
突然のクリスマスパーティでの「プレゼント交換」。
残されたプレゼントは、マヤの手編みのマフラーと、アスカの缶詰
ユウとリオの最後のジャンケンの結果は!?)


リオ「ポンッ!!」   ユウ「ポンッ!!



その手を出しながら、僕は思いました。


神様。

もしここで勝つことができたら、僕のこれからの人生すべてを、あなたに捧げます。







……………。



出された手を、二人は同時に見つめました。


僕はグー。

リオ先生は………









パーでした。

リオ「よっしゃあああああああああ!!



神様。




僕の人生ごとき、いらないってんですね。



リオ先生は、大喜びで袋の中に手を伸ばします。

リオ「うーははっはっはー♪



これですべてが終わりました。
リオ先生がマフラーを取らないわけがありません。

僕に回ってくるのは、150%、ツナ缶です。



また、去年の悪夢が繰り返される。
僕はそう思いながら、自分の不運を嘆きました。



でも、おかしなことが起こりました。
リオ先生は、袋の中を手で触っているうちに、
顔色がどんどん青ざめていったのです。

そして心底疲れきったようにため息をつくと、先生は袋の中から取り出しました。

リオ「こ、これにしようかなぁ……」


出てきたものは、大きな箱。


アスカ先生の、缶詰つめあわせです。






僕は、状況がよく飲み込めませんでした。

ユウ「リ、リオ先生………。本当にそれでいいんですよね?」

すると先生は、明らかに不自然な笑顔で言いました。

リオ「も、もちろんさぁ…。こ、これは何かな?」
そして箱を開けました。

リオ「うわぁ、ツナ缶だぁ!
 欲しかったんだよな、こういうのー!!









あなた、本当にリオ先生ですか。


どう考えても、奇跡が起こったとしか考えられません。

僕は狂喜乱舞しながら、袋の中に手を入れました。

ユウ「じゃあ僕は、マヤ先生の……!







……………。











何ですか、これ。










いったい何が起こったのか!?


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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。03/04
               ~クリスマスプレゼントを渡す女医。最終話
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(昨日までのあらすじ…
突然のクリスマスパーティでの「プレゼント交換」。
ユウは最後に残ったマヤの手編みのマフラーを手に入れるはずだったが…!?
長かった夜に、ついに衝撃のラストが!)



何ですか、これは。


僕は手に当たる感触が信じられませんでした。
袋の中では、プレゼントが包みから破れて、一部がはみだしていました。

でも、そのマフラーであるはずの一部が。




ヒモだったのです。





これは。

これはもしかして。










ほどけたマフラー?


そうだ。それしかない。

恐らく、結びがゆるくて、どこかでほどけてしまったんだ。

落ち着け。
落ち着くんだユウ。

僕はリオ先生の方を見ました。
先生は、明らかにこちらを見て見ぬフリをしています。


リオ先生も、恐らくこれに気がついたから、わざとアスカ先生のツナ缶に逃げたに違いありません。





でも、でも僕には…









逃げ場がありません。

マヤ先生は、にこやかに僕のほうを見つめています。

マヤ「どうしたの? 早く取ってよ、ユウ先生」




………。


僕はそこで、1つの考えが浮かびました。

ユウ「あの、マヤ先生…?」
マヤ「なぁに?」
ユウ「先生のプレゼントって、完成してますよね?」

マヤ「………。当たり前じゃない」

ユウ「ヒモのように細長いマフラー、じゃありませんよね?」


マヤ先生は、不思議そうな顔をして言いました。


マヤ「ちゃんとした、完成した、普通のマフラーよ?












やっぱり、今のコレは普通じゃないんですね。



僕はしばらく、呆然としていました。

このマフラーだったものを見たら、マヤ先生は恐らくショックを受けるでしょう。
自分が必死に作ったものが壊れてしまうことほど、悲しいことはないはずです。

僕はそこまで考えると、1つの決心をしました。



マヤ「……ユウ先生?」

僕は静かに袋の中で、そのヒモを包みの中に戻すと、一気に包みごと取り出して言いました。

ユウ「うわぁ、マフラーだ!! 嬉しいなぁー!!
   ありがとうございます、マヤ先生ー! それでは今日は遅いので失礼しますー!!」

そして僕は脱兎のごとく駆け出しました。

マヤ「ちょ、ちょっとユウ先生ー!?」
アスカ「ユウくんー!?」
リオ「………放っておいてやれ、マヤ。ユウも逃げたいときがあるんだ…」


リオ先生の中途半端なフォローが、静かに心に突き刺さりました。


そして僕は帰りがけに「サルでもできる編物入門」という本を買うと、
一晩かかって、必死に元通りの作品に仕立て上げたのです。

イブの夜に、たった一人で自分のためにマフラーを編んでいる男。


僕は目を真っ赤にしながら、こう思いました。













ツナ缶の方が、マシだった気がする。







次の日。

僕は何とか完成したマフラーを首に巻いて、病院に行きました。
それを見たマヤ先生は、嬉しそうに言いました。

マヤ「あ、ユウ先生、つけてくれてるんだー!」

ユウ「…は、はい……」

マヤ「あ、このワンポイントの部分が、一番苦労したのよねー!












そこ、確かに一番苦労しました。




僕は、最後にマヤ先生が言った言葉を、未だに忘れません。

マヤ「残り物には、福があったでしょう?」












残り物 = ヒモ 。



僕はその時、1年後までに必ずジャンケンに強くなる、と誓ったのでした。


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