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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。 6/26
~一人でチャットする女医。
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それは、つい先日のことです。
マヤ先生は、楽しそうに僕に話しかけてきました。
マヤ「ねえ、誰かすごいチャッターって、いないかなぁ?」
何語ですか。
マヤ「ほら、チャットがとっても早い人!」
その時に僕は思い出しました。マヤ先生は昔からチャットにハマっていました。
でも唯一の悩みは、
「打つのが速すぎて、誰もついて来れない」ことなのです。
マヤ「私ねぇ、自慢じゃないけど、ポルノグラフィティの「サウダージ」を、
自分で歌うのより速くタイプできるのよ?」
本当に自慢じゃないですね。
マヤ「やってみよっか? サウダージ、と…」
そう言うとマヤ先生は、鬼のようなスピードでタイプし始めました。
マヤ「♪ウソをちゅくくらいなら~ なぬも話してくれなくててぃい~♪」
歌の方、かんでます。
マヤ先生は、目にもとまらぬスピードで打ち始めました。
マヤ「はい、完成!」
もう!?
僕は画面を見ました。すると第1行目には、自信満々にこう書いてありました。
差宇ダー痔
ちょっと待って下さい。
何ですか、このシュールな誤変換は。
マヤ「Wordもビックリでしょう?」
僕もビックリです。
マヤ「だから、私がチャットすると、誰もついてきてくれないのよ…」
そう言うと、マヤ先生は悲しそうな目をしました。
その瞬間、僕の頭に映画のワンシーンのような展開が浮かびました。、
ユウ「僕が、ついていってあげますよ…」
マヤ「え…。それって…」
ユウ「先生…。愛してます…」
マヤ「嬉しい…! その言葉を待ってたの!」
………。
ありえないとも、言い切れないなぁ。
(某小便小僧のCM風に)
最近、妄想の機会が多い僕は、思い切って行動に出してみることにしました。
ユウ「ぼ、ぼ、ぼぼぼくが、ついていって、あげますよ…」
その瞬間、二人の時間が止まりました。
そして。
マヤ「それはそうと、どこかいいチャット、知らない?」
かるく流されたみたいですね、ボク。
マヤ「はぁ…。いったいヒマな夜に、何を楽しみに生きていればいいのかしら…」
ユウ「……………」
マヤ「いいチャット相手を思いつかないと、夜勤10日分ね」
そう言われた僕は、必死に考えました。
そう…。マヤ先生は、人間相手にチャットするから、悩むんだ。
よくある、チャットをするプログラム、「ロボットチャット」なら…。
多少虚しいかもしれませんが、背に腹は変えられません。
ユウ「ロ…ロボットチャットなんてどうですか?」
マヤ「え、アイボと?」
いや、それもロボットだけれども。
マヤ「なんか、よく分からないけど…。察するに、ロボットみたいに速くて精密なタイピングをするチャット相手なワケね?」
いえ、『みたいに』じゃなくて。
マヤ「分かった。やってみるね。その人のいるページに案内してくれる?」
僕は、多少の誤解がある気がしましたが、適当に「ロボットチャット」で検索して、一つのページに入りました。
マヤ「では…。やってみるね…」
ユウ「それでは、僕はこれで…」
すると、マヤ先生は僕のほうを向くと、さわやかな笑顔で言いました。
マヤ「ヘンな相手だったら、どうなるか分かってるよね♪」
………。
人間じゃないと分かったら、殺される。
僕の背筋に、絶対零度のドライアイスが突き刺さった気がしました。
さあ、ユウの運命は!?
果たして、バレずにチャットを終わらせることができるのか!?
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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。 7/2
~一人でチャットする女医。2
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<昨日までのあらすじ>
あまりに打ち込みが速すぎてチャット相手がいないマヤ。
ユウは「ロボットチャット」を紹介する。相手がただのプログラムだとは知らないマヤ。
ユウ直感した。「チャット相手が人間じゃないってバレたら、殺される…」
マヤ「さって…。では、早速やらせていただきますかぁ♪」
先生は、嬉しそうにキーボードに向かいました。
せめて、名前くらいは人間らしいロボットチャットであってくれ…。
僕は心の底から祈りながら、そのページを見ました。
するとそこには、このように書いてありました。
チャットくん7号が、入室しています。
あなた、今すぐ出てって下さい。
僕は恐る恐るマヤ先生の方を見ました。
マヤ「あはははははー! 7号だってー!
もしかして、ロンドンブーツ1号2号のパクリ?」
………。
変なところに突っ込むのに夢中で、気づいていません。
画面では、チャットくん7号があいさつをしています。
ナナ>こんにちは! 私のことは、ナナって呼んでね♪ 7号だから、ナナなのー!
するとマヤ先生は、感動したように言いました。
マヤ「なるほどぉ…。ナナちゃんだから、7号なのね」
先生、逆です。
僕はそう思いましたが、あえて突っ込んで自分の寿命を減らす必要もないと思いましたので、その言葉を飲み込みました。
マヤ「相手にとって、不足なしね」
メモリー不足は、あるかもしれません。
マヤ先生は、さっそく打ち込み始めました。
マヤ>こんばんはー!
ナナ>こんばんは! マヤちゃん!
マヤ「は、速いっ!!」
そりゃそうだ。
マヤ「じゃあ、私も本気を出すわよ…?」
そしてマヤ先生は打ち込み始めました。
…しかしまさか、その無邪気なチャットロボ、ナナちゃんが、あんなコトを言うとは思いませんでした。
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精神科医ユウの日記 <90%ノンフィクション・10%ユウの妄想>
モーニング女医。 7/3
~一人でチャットする女医。3
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<昨日までのあらすじ>
「チャットくん7号」通称『ナナちゃん』とチャットをすることになったマヤ。
マヤはナナを完全に人間だと思い込んでいる。
「プログラムだとバレたら殺される…」恐れるユウ。
ナナちゃんは、ユウの期待通りに見事バレずにチャットを終わらせることができるのか!?
マヤ先生は、嬉々とした顔で、キーを打ち込んでいきます。
マヤ>はじめまして。私はマヤです。よろしくぅ! (00:03)←時間経過
ナナ>はじめまして! いい名前ね、 マヤちゃん! (00:03)
マヤ>でしょー!? よく言われるのー! (00:05)
ナナ>私はナナ! よろしくねっ♪ (00:05)
マヤ先生は溜息をつきました。
マヤ「この子の打ち込み、どんな速度なのよ!?」
電気の速度です。
マヤ先生は、再び打ち込みます。
マヤ>ナナちゃんは、今日は何してたの?
ナナ>今日はずっと寝てたよー
マヤ>あはは。一日中寝てると、体がなまるでしょ?
ナナ>うん。なまる
出ました。
ロボットチャット秘技、そのまんま返し。
マヤ>毎日、色々と充実してる?
ナナ>充実してるー! すごいのー!
マヤ>私もね、今日はとっても面白いことがあったの!
ナナ>面白いこと?
非常に順調だ、チャットくん7号。
僕がそう思った時に、その悲劇は起こりました。
マヤ>そう! すごく面白いこと!
ナナ>ねえ、今日はいい天気だったね。
ロボットチャット黄金法則
ロボットは、一つ以上前のセリフに、つながる会話ができません。
そうだね。確かにそうだ。
でも今、君は結果的に、
話を流しちゃったんだ。チャットくん7号。
マヤ「………………………」
怒ってます。
絶対に怒ってます。
先生は、震える手で打ち込みました。
マヤ>そうね、いい天気だったわねー!
あ、持ち直した。
ナナ>ねえ、マヤちゃんって、男? 女?
今、聞くんかい。
マヤ「…………………………………………」
怒らないで下さい。怒らないで下さい。
この子の不始末は、ぼく
プログラマーの責任です。
マヤ先生は、何とかキーを打ちます。
マヤ>私は女だよぉ♪ ぴっちぴちの、女の子!
僕は怖くて、これ以上正視することができませんでした。
まさに一触即発。
ダイナマイトの導火線の、3ミリ手前に炎がある状態です。
しかし、です。
ナナ>わー! ぴっちぴちー!!
マヤ>そう! ピッチピチ!!
ナナ>マヤちゃんって、いくつ?
ぷちっ。(何かが切れる音)
ナナちゃん。人間界の常識を一つだけ教えよう。
『自称ぴっちぴちの女性』に、年齢を聞いちゃダメだ。
マヤ「○★×♯&$◆!!(声にならない)」
医局中に吹き荒れるモンスーン。
僕はその嵐に巻き込まれながら、
現代科学の限界を感じたのでした。
ちなみに、
「ロボットだってバラせば怒りが収まるのでは?」という疑問に対しては、
「医局全体の嵐と、自分の命、どっちが大切ですか?」とお答えしておきましょう。
完